ZOZO社・前澤友作社長による総額1億円の「お年玉」が話題だ。昨年12月には、スマートフォン決済サービス「ペイペイ」の100億円キャンペーンも反響を呼んでおり、今後も直接的にお金を配るような企画が出てきそうだ。
特にツイッターでは、前澤社長のお年玉に類似したツイートが複数見られる。もしかしたら今後、フォロワーとRTだけ稼いで、実際には何もしないというユーザーが登場する可能性がある。
もし、「RTとフォローした人から抽選で■人に●円をプレゼント」という投稿をしておきながら、お金を出さなかった場合、詐欺などに問われる可能性はあるのだろうか。西口竜司弁護士に聞いた。
●「抽選で●万円」は「申し込み」か?
「今回の社長の大判振る舞いには驚かされました。私はRTしませんでしたが、複数の知り合いがRTしていました。当選かどうかは聞いていません。今回はRTだけで何もしなかった場合の法的な問題について触れてみたいと思います」(西口弁護士)
西口弁護士によると、今回のようなキャンペーンは「契約」の問題になるという。契約は、「申し込み」と「承諾」の意思表示が合致したときに成立する。
「『RTとフォローした人から抽選で■人に●円をプレゼント』というつぶやきは法律上どのような意味を有するか考えてみます。
この行為は民法に従いますと、『申し込み』ではなく『申し込みの誘因』というものにあたります。したがって、申し込みの誘因に対し、読者がRTしただけでは贈与契約等は成立しません。
対比すると分かりやすいのですが、バイトの募集広告みたいなものをイメージしてください。応募したからといって即採用にはなりませんね」
つまり、「申し込み」はキャンペーンの投稿ではなく、フォローやRTの方だということだ。
●責任を追及するのは難しい
贈与契約が成立しないということは、プレゼントがなくても責任を追及できないのだろうか。
「抽選があるときは、相手方が当選者を決定することにより『承諾』があったとして贈与契約が成立するということになります。
結局、道義的な問題はあるかもしれませんが、RTに対し何もしなかったとしても契約は成立しておらず、損害を何と考えるかも難しいところですので、損害賠償を請求するのは難しいでしょうね。
また、刑事的な責任についても、読者からお金をだまし取ることにつながっていないので詐欺罪にあたるとするのは難しいでしょうね。
ただし、本当のキャンペーン主(たとえば前澤社長)の偽アカウントを作成し、同様のツイートをしたような場合、偽計業務妨害罪に該当する可能性はあります」
責任の追及が困難ならば、フォロワー獲得を目当てにウソのキャンペーンをする人も出てきそうだ。本当に当選者がいるかどうかは、ユーザー側からはわかりづらい。
その意味では、当選者が自発的に名乗り出ていた、今回の前澤社長のキャンペーンは信頼性の獲得という点でも成功したと言えそうだ。
「世の中うまい話に付け込む人間もいます。慎重に行動することが大切ですね」(西口弁護士)