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ホームパーティー「手料理」で食中毒に…治療費請求できる? お店との責任の違いは?
写真はイメージです(tomos / PIXTA)

ホームパーティー「手料理」で食中毒に…治療費請求できる? お店との責任の違いは?

ハロウィン、クリスマス、お正月ーー。ホームパーティーや親族の集まりで手料理を振る舞ったり、手料理を持ち寄ったりする機会が増える時期ではないでしょうか。費用は抑えられるかもしれませんが、手料理が原因の食中毒の危険と隣り合わせですから注意が必要です。子育て情報サイト「ママスタ」の掲示板には、当事者となってしまった方から、相談が寄せられています(「手料理で食中毒や食あたりになった方、居ます?」→ http://mamastar.jp/bbs/comment.do?topicId=1851164 )。

投稿主が「手料理で食中毒や食あたりになった方はいます?」と聞いたところ、「加害者」「被害者」双方が投稿していました。ある人は、「カンピロバクター。原因は鶏肉。自分では絶妙な感じで加熱できたと思ったんだけど、実際は微妙だったみたいで、散々だった」。別の人は、「親戚が焼いてくれた牡蠣。原因は加熱不十分だと思う」。

お店で食中毒が発生した場合には、店に対して、治療費や慰謝料の請求もできます。でも、営利目的ではない友人・知人の手料理によって「食中毒」となった場合、作った人は何かしらの罪に問われてしまうものなのでしょうか。また、食中毒になった人は、作った人に対して治療費や慰謝料などの請求をできるのでしょうか。半田望弁護士に聞きました。

●手料理で食中毒を発生させたら?

「食品を提供する事業者は、食中毒防止のため、食品衛生法により規制がされており、違反した場合には刑罰を受けることもあり得ます。しかし、食品衛生法はあくまで所定の事業者にのみ適用されますので、個人の手料理については適用されません」

では、食中毒を発生させても法的な責任は問われないのでしょうか。

「そうではありません。手料理で食中毒が発生した場合、刑法の『過失傷害罪』(刑法209条)が問題となることになります。過失傷害罪とは、わかりやすく言い換えると『不注意により人に怪我をさせるなど、人の生理機能を害した』行為を処罰するものです。

食中毒も『生理機能を害する』傷害に該当します。食品提供者に過失、つまり通常求められる注意義務に違反する事情があれば、過失傷害罪が成立する可能性はあります」

今回の事例でいえば、作った人は「絶妙な感じで加熱できた」と考えていたようです。

「料理を作った人は『きちんと焼けていた』と考えていたが、実は生焼けだったという場合ですね。この場合には、一見して食中毒の危険があるとは考えられない程度に火が通っており、料理を作った人も衛生面について通常求められる注意を払い、通常考えられる手順・内容で料理していたのであれば、結果として食中毒が発生したとしても過失があるとは言えません。

逆に『調理した人に過失がある』と言い得る場合としては、明らかに傷んでいる食材を使った場合、胃腸炎を発症していたのに調理したり、調理器具を洗わずに調理したりするなど衛生上の問題がある場合、あるいは確実に加熱すべき食材を明らかに生焼けの状態で提供した場合などに限られるでしょう」

●治療費は請求できる?

刑事責任は問えないとしても、手料理を提供した人に対して、治療費や慰謝料などの請求はできるのでしょうか。

「料理を提供したことが『不法行為』(民法709条)に当たるのであれば、被害者は加害者である料理提供者に対して損害の賠償を請求することができます。不法行為の要件としては、『行為者の故意・過失』『権利・利益の侵害』『損害の発生』『因果関係』が必要になります」

今回のケースではどうでしょうか。

「先ほど述べた刑事責任と同様、『過失』の有無が問題となるでしょう。民事責任の場合、一般的には、刑事と比べて過失は緩やかに理解されます。きちんと衛生面に配慮して料理をしていれば、民事上の過失も否定される可能性が高いと思われます。

仮に過失が認められる場合でも、食品衛生法の適用を受ける事業者に比べて、厳格な管理をする義務のない一般の家庭で提供される手料理には、食中毒のリスクは潜んでいるとも言えます。提供を受けた側もそのリスクを承知して料理を食べたとも考えられ、賠償責任や金額の算定にあたっては手料理であることも考慮され、事業者が提供する料理に比べ、低い金額になるでしょう。

もっとも、法的責任が生じなくても、道義上の責任は否定できません。お見舞いや治療費を任意に支払うことは十分あり得るだろうと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

半田 望
半田 望(はんだ のぞむ)弁護士 半田法律事務所
佐賀県小城市出身。主に交通事故や労働問題などの民事事件を取り扱うほか、日本弁護士連合会・接見交通権確立実行委員会の委員をつとめ、刑事弁護・接見交通の問題に力を入れている。また、地元大学で民事訴訟法の講義を担当するなど、各種講義、講演活動も積極的におこなっている。

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