福島第一原発の原子炉をつくった「原発メーカー」に2011年の大事故の責任があるとして、原告約4000人がゼネラル・エレクトリック(GE)、東芝、日立の3社を相手取って、一人あたり100円を支払うよう求めている「原発メーカー訴訟」の第1回口頭弁論が8月28日、東京地裁で開かれた。
原告側は、原発事故が起こっても、原発メーカーの責任が免除される法制度(原子力損害の賠償に関する法律・原賠法)は、原子力の恐怖から免れて生きる権利(ノーニュークス権)を侵害して違憲だとして、原発メーカーの賠償責任を問うことができると主張した。
これに対して、被告側は「原子力の恐怖から免れて生きる権利は、単なる不安感だから法的保護に値しない」「被害は適切に賠償されている」などとして、争う姿勢を示した。
●「原発メーカーが二重三重に保護されている」
弁論後の記者会見で、原発メーカー訴訟弁護団の共同代表・島昭宏弁護士は「原発の体制が痛みを感じるところにもっていくために、原発メーカーという、体制の中枢に切り込んでいく必要がある」と裁判の意義を語った。
島弁護士は「原賠法には、『原発事故の責任は電力会社が負う』『電力会社以外は誰も責任を負わない』『原発事故に関しては、PL法(製造物責任法)は適用しない』と書いてある。原発メーカーが二重三重に保護される仕組みになっている」と指摘する。
そのため、原告団は、この仕組みを突破するために、「個人には原子力の恐怖から免れて生きる権利(ノーニュークス権)があり、原賠法の仕組みは、この人権を侵害しているから違憲で無効だ」と主張している。
島弁護士は、「(ノーニュークス権には)原発事故が起こった後は、二度とそうした被害が起こらないように求める権利も含まれている。なぜ事故が起こったのか、誰の過失で起こったのか、事故原因を追究する権利も含まれる。そうした権利があることを、この裁判の中で認めさせていきたい」と語った。
また、原告団の一人で、元・東芝原子力プラント設計技術者の後藤政志さんは、技術者としての立場から、原発メーカー訴訟の意義を述べた。
後藤さんは「技術というのは、人間のやることだから、最大限努力してもうまくいかないことがある。事故が起こった場合には、被害についてきちんと補償が必要だ。それなのに、(原発事故では)メーカーが関わらなくていいという、構造そのものが問題だ」と指摘。「自分がもといた会社を訴えるのは心苦しいが、社会正義のためにやらざるを得ない」と語った。