KARAや超新星などのK-POPの人気グループが出演を予定していたイベント「K-POP IN 豊岡・神鍋高原」が開催中止となり、主催会社からチケットを購入した人への返金の見通しが立たない事態になってしまっている。
イベントは6月30日、7月1日の2日間での開催を予定されていたが、直前の6月21日になってイベントを主催する株式会社アンフィニジャパンより、チケットの販売不振のため開催に必要な資金が工面できなくなったことを理由として、イベントが中止になることが発表された。そして、本来であればチケットを購入していた人には返金が行なわれることになるはずだが、同社は大幅な債務超過状態のため自己破産申告を余儀なくされているとして、同社からの返金は行なわない方針であることを明らかにした。つまり、資金がないので返したくても返せない状態だということだ。
しかし、ここで気になるのが、このようなイベントで集客が上手くいかなかった場合、主催者にとっては赤字の危険性はあるものの、イベントそのものを中止にするといった例はあまり聞かない。ところがアンフィニジャパンの説明からすると、今回のイベントはチケットが予定通りに販売できた場合に初めて開催資金が調達できるという財務状況であったことが推察され、またチケット販売が不振で中止になる場合には購入者への返金もままならないことになるのが当初から予想できていたのではないかということだ。これでは詐欺の疑いをもたれてもおかしくない。
はたして、アンフィニジャパンの行為は詐欺にあたる可能性があるのか。そして既にチケットを購入していた人には代金を取り戻す手段は残されていないのか。消費者契約に詳しい加藤英典弁護士に見解を聞いた。
「過去の大型消費者事件においては、事業に実体がない場合や倒産状態で顧客から代金を受け取ってもサービスを提供する見込みがない場合などの悪質な事案では、会社経営者などが詐欺罪で立件されています。」
「ポイントとなるのは、刑法上の詐欺罪が成立するのに必要な欺罔行為(人を欺す行為)があったといえるかです。アンフィニジャパン側の説明によると、計画通りにチケットが売れていればイベント開催は可能であったのですから、予想外のチケット販売不振で結果的にイベント開催ができなくても、遡って販売時に欺罔行為があったというのは難しいでしょう。もっとも、販売当初から既に会社が倒産状態であり、イベント開催が不可能なのにチケットを販売したのであれば、欺罔行為があるといえます。この件ではチケット販売不振という説明に疑問の声もあり、今後の手続きの中で事実関係が明らかにされるべきと思います。」
「購入者には破産手続で配当を受け取る権利がありますが、自己破産の手続費用もすぐに準備できないような会社ですから、破産手続は配当がないまま終結する可能性が高いのでしょう。そうなると、破産手続では1円も回収できません。他の回収方法としては、会社ではなく、経営者個人に対して損害賠償を請求する方法があります。経営者個人に刑法上の詐欺罪が成立していれば、民法上も会社と経営者個人が共同で不法行為をしたとして、経営者個人に対しても損害賠償を請求できます。」
アンフィニジャパンがチケットの販売当初どのような状態にあったかはまだ明らかでないが、場合によっては経営者個人に対する損害賠償請求も可能になるということだ。
いずれにせよ、チケットを購入してイベントを楽しみにしていたファンが泣き寝入りするしかないという事態にはなってほしくないものである。