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「未婚の母」になることを決めた19歳ーー相手が「出産」に反対だったら、どうなる?
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「未婚の母」になることを決めた19歳ーー相手が「出産」に反対だったら、どうなる?

5年ごとに実施される「国勢調査」。その最新データである2010年の調査によると、結婚しないで子どもを出産した「未婚のシングルマザー」は、全国で約13万人で、この10年間で倍増したという。

弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、そんな「未婚の母」になることを決意した19歳の娘をもつ親から相談が寄せられた。相手からは中絶を要求されているものの、娘は出産を望んでいる。相談者自身も娘の出産に、賛成しているそうだ。

しかし「相手の反対を押し切って出産しますが、認知や養育費を求めることはできるのでしょうか?」と、不安を打ち明ける。また、もし「中絶」という選択をした場合、「手術費用」や「慰謝料」をもらうことはできるのだろうか。

●出産に「父親の同意」は必要ない

須山幸一郎弁護士の答えは明快だった。

「まず前提として、相手の男性が出産を望まない場合でも、妊娠した女性が出産すること自体には、何ら法的な問題はありません。そして、父親には子に対する扶養義務がありますので、相手の男性から認知されれば、養育費の請求をすることは可能です」

では、認知されない場合は、養育費を請求することができないのか。

「生まれてくる子は、婚姻した夫婦間の子ではありませんので、相手から認知されない限り、法律上の親子関係が発生しません。したがって、養育費を請求するには、相手から認知されることが必要です。

認知については、相手がすすんで認知届を提出してくれるようであれば、問題はありません(任意認知)」

では、相手が認知をためらった場合は、どう対処すれば良いのだろうか。

「相手が認知しない場合、認知を求めるには、まず家庭裁判所に認知調停を申し立て、相手と話し合いをしなければなりません(調停前置主義)。

なお、最近は、費用が安くなってきたこともあり、調停の中で『DNA鑑定』を行う場合も増えています。

調停において、双方の間で、その子どもが相手の男性の子であるという合意ができた場合、家庭裁判所が必要な事実の調査を行って『その合意が正当である』と認めれば、合意にしたがった審判がなされ、認知が成立します。

一方、そのような合意ができない場合は、家庭裁判所に『認知の訴え』を起こすことになります」

●求められて中絶をした場合は「慰謝料請求」が可能

では、もし仮に「中絶」という決断をした場合、費用の負担はどうなるのだろうか。

「中絶という選択をした場合、妊娠という原因を作ったのは双方ですので、原則として、手術費用は双方で負担すべきことになります。

また、相手から中絶を求められ、女性が中絶せざるをえなくなったというような場合、女性は、妊娠から中絶というプロセスを経るなかで、精神的・身体的に苦痛を生じることが多いものと思われます。これらについて、慰謝料として、一定の金額を請求できることが多いでしょう」

慰謝料の額はどのように決まるのか。

「慰謝料の額については、『どのような経緯で妊娠・中絶するに至ったか』という事情に左右されます。たとえば、結婚を前提に交際しており、双方とも妊娠することを容認していたのに、いざ妊娠が発覚してみると、突如男性が態度を変え、中絶を求めてきたというような場合は、慰謝料の金額が高くなることが多いでしょう。

逆に、いわゆる『遊びの関係』で、避妊行為もしていたが、『予想外に妊娠した』というような場合は、相対的に低くなるものと思われます」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

須山 幸一郎
須山 幸一郎(すやま こういちろう)弁護士 かがやき法律事務所
2002年弁護士登録。兵庫県弁護士会。元神戸家裁非常勤裁判官(家事調停官)。三宮の旧居留地に事務所を構え、主に一般市民の方を対象に、法律相談(離婚・男女問題、相続・遺言・遺産分割、借金問題・債務整理等)を行っている。

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