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携帯「GPS情報」の捜査利用――本人に知らせる必要はない? パブコメ募集開始
携帯端末の「GPS情報」

携帯「GPS情報」の捜査利用――本人に知らせる必要はない? パブコメ募集開始

その人の現在位置が分かる携帯端末の「GPS情報」。それを犯罪捜査に利用しやすくするため、電気通信事業者の守るべき事項を定めた「ガイドライン」の改正が行われようとしている。これまで、捜査機関がある人物のGPS情報を取得するためには、本人がそのことを知ることができるようにする必要があったが、その縛りを外そうとしているのだ。総務省はこの案をネットで公開し、パブリックコメントの募集を始めた。

●総務省のワーキンググループが「条件緩和」を提案

GPS情報は、通信の秘密やプライバシーとして保護される必要がある。そのため、現行の「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」では、捜査機関がGPS情報を取得するための条件として、(1)裁判官の令状と(2)「位置情報が取得されていることを、利用者が知ることができるとき」という縛りがかけられている。

ところが、総務省「ICTサービス安心・安全研究会」の個人情報・利用者情報等の取扱いに関するワーキンググループ(WG)の報告書(案)によると、「犯罪捜査の場合においては、GPS位置情報が取得されていることを被疑者等に知られてしまい、実効性のある捜査が困難となるため、捜査において活用することができない状況が生じている」という。

そこで、今回は、プライバシーに対する配慮は裁判所の令状で「十分」として、(2)の「利用者が知ることができるとき」という縛りを外すべきだと提案している。

●「裁判所がしっかりチェックする必要がある」

元検事の落合洋司弁護士は弁護士ドットコムニュースの取材に対して、次のようにコメントした。

「犯罪捜査の際、相手にGPS情報の利用を通知することは、現実的ではありません。捜査に事実上使えないということであれば、条件緩和はやむを得ないでしょう。

しかし、GPS情報はプライバシーに大きくかかわるため、利用が許されるべきかどうかは、捜査の必要性とプライバシー・人権侵害との兼ね合いという話になります。条件緩和と同時に、その点を裁判所がしっかりチェックしていく必要があります。

裁判所の令状審査のあり方については、従来から批判があります。その犯罪を捜査するために、GPS情報を利用する必要性が本当にあるのか、裁判所はひとつひとつの案件を厳しくみていかなければならないでしょう」

パブリックコメントの意見提出要項は、総務省のサイトで確認できる。

ガイドラインの改正案

http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban08_02000169.html

ワーキンググループの報告書案

http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban08_02000167.html

意見提出の期限は5月22日まで。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

落合 洋司
落合 洋司(おちあい ようじ)弁護士 高輪共同法律事務所
1989年、検事に任官、東京地検公安部等に勤務し2000年退官・弁護士登録。IT企業勤務を経て現在に至る。

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