鳴り物入りではじまった「NISA(少額投資非課税制度)」の利用が低迷している。
NISAは、株など金融商品にかかる税金が、年間100万円まで非課税になるという制度だ。一般家庭の資産を貯蓄ではなく「投資」へと促す狙いで、今年1月に始まった。
ところが、金融庁が6月末までのNISAの利用状況をまとめたところ、開設されたNISA口座の総数は727万に達したが、実際に利用されているのは約3割程度にすぎなかった。また、利用枠という観点でも、総額7兆2736億円のうち、利用されているのは1兆5631億円にとどまっている。
どうしてNISAの利用は低迷しているのだろうか。何らかの制度上の問題でもあるのだろうか。米津晋次税理士に聞いた。
●利用者の8割が「50歳以上」
「たしかに現行のNISAには、いくつか制度上の問題点があります。しかし、普及していないのはそれらが原因ではありません」
米津税理士はこうキッパリという。では、どんな原因が考えられるのか。
「金融庁の調査によると、NISAの買付額は50歳以上が79.9%を占めています。20~30代の若者は利用者全体の9.1%にすぎません。
つまりNISAは、株式投資に慣れた中高年層を引きつけている一方で、若者には人気がない状況なのです」
●株式投資は難しい?
どうして、NISAは利用されないのだろうか?
「それには、ふたつの理由があると思います。
まず一つは、これまで国がまともに『投資教育』をしてこなかったからです。
たとえば、株式などの投資は元金が割れる可能性がありますので、運用には正しい知識が必要です。
投資知識を身に付けていなければ、財産をきちんと運用して増やすどころか、証券口座を開設したり、どんな商品を購入するか選ぶことすら難しいでしょう」
NISAは若者に、ほとんど利用されていないと言えそうだが・・・。
「二つめの原因は、そもそも若年層の年収が少ないことにあるでしょう。彼らの多くは投資どころではない生活をしています。
少し余裕が生まれたとしても、難解でハードルが高い株式投資より、わかりやすくて娯楽の要素もある競馬やパチンコなどにお金を使うのが自然でしょう」
米津税理士はこのように持論を説明したうえで、「そもそも、若いうちは株式に投資するよりも、自分に投資をするのが正しい姿だと思いますけどね」とまとめていた。
【取材協力税理士】
米津 晋次(よねづ・しんじ)税理士
会社設立から融資・事業計画書作成・補助金申請・会計ソフト導入支援など名古屋地区を中心に100社以上の起業家をサポート。平日夜10時まで対応。著書に「利益が見える戦略MQ会計」「税理士が教える得するパートタイマーBOOK」などがある。
事務所名 : よねづ税理士事務所
事務所URL:http://www.yonezu.net