子どもへの性暴力を防ぐための「日本版DBS」。今年12月25日の施行まで半年あまりとなったが、現場では制度設計をめぐる懸念が相次いでいる。
東京都は6月5日、内閣府特命担当大臣(こども政策)宛てに緊急要望書を提出。制度の根幹にかかわる主な課題を指摘し、国に早急な対応を求めた。
●そもそも「日本版DBS」とは?
日本版DBSとは、イギリスの制度(Disclosure and Barring Service)を参考に導入される仕組みで、子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を確認できる制度だ。
正式名称は「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(こども性暴力防止法)。
2024年6月に成立し、2026年12月25日に施行される予定。学校や保育所だけでなく、学習塾やスポーツクラブなど民間事業者も対象となる。
●「不適切な行為」の基準があいまい
要望書が問題視したのは、「不適切な行為」の定義のあいまいさだ。
法律では、防止措置が必要な「不適切な行為」の内容は業種・業態によって異なり、「どのような行為が該当するかは事業者ごとに判断する」とされている。
東京都は、事業者に大きな負担が生じているとして、業種・業態別のマニュアルや規程類のひな形を速やかに示すよう求めた。
●ガイドラインが「膨大すぎて理解が困難」
国が示したガイドラインの内容が膨大であることも問題として挙げられた。
要望書は「事業者が必要な取組を理解することが困難」と指摘し、業種・業態ごとに必要な対応を整理した、わかりやすいマニュアルの作成を求めている。
●前科確認システム「長引くと運営に重大な影響の恐れ」
実務面で懸念されているのが、システムの処理速度だという。
特定の性犯罪の前科を確認するシステムは現在、国が構築中とされている。しかし、確認には一定の期間を要するとされており、要望書は「確認期間が長引くと事業者の業務が停滞するなど、事業運営に重大な影響が生じる恐れがある」と警告している。
また、2027年4月に新規採用される人や異動する人などについては、手続きを円滑に進めなければ、採用や配置転換までに犯罪の事実確認を終えることができなくなる。
そこで東京都は、雇入れや配置転換に支障が生じないよう、犯罪の確認手続きの迅速化を強く求めている。
●「3年間、前科者が子どもに接し続ける」リスク
現行の方針では、施行時点ですでに働いている職員らについては、施行日から3年間かけて「分散」して犯罪事実の確認をすることとされている。
一方、東京都はその間に「特定性犯罪前科のある者が従事し続けるおそれがある」と危険性を指摘している。
そのうえで、ガイドラインが示した「分散方式」ではなく、事業者の対応可能な時期に早期の確認を可能とすることを求めている。
また、事業者には法律・福祉・心理・医療などの専門家との連携が必要になる一方、小規模事業者にとってはそうしたネットワークを独自に確保するのが難しいことから、多様な専門家に協力を依頼できるスキームの構築を要望した。