「食い尽くし系」という言葉を見聞きしたことがあるだろうか。他の人の分の食事を食べてしまう人を意味するネットスラングだ。
近年、子どものために用意した料理を食い尽くしてしまう「家族」に困っている人たちがSNSなどで声をあげている。
弁護士ドットコムニュースが体験談をLINEで募ったところ、ある40代女性から「父親に食事やおやつを奪い取られていた」と連絡があった。
彼女の場合、「これは私のもの」と釘を刺す必要があったという。幼いころにアイスを奪われた記憶は今も胸の痛みとなって残っているが、「後で食べるから」「これは私のだから食べないで」と、事前に伝えておくことで、食い尽くしは確実に減ってきたという。
●「子どものおやつを何でも欲しがるなんて、なんて大人げない人なんだ」
体験を語ってくれたのは、粕屋久美子さん(仮名)。両親と同居している。現在70代の父親には、「食い尽くし系」の傾向があったそうだ。
「お皿が目の前にあると、勝手に私の皿から食べ物をかすめ取られたり、食べきれなかったり用事で少し席を外して戻ったり来たりすると、当たり前のように食べ物がなくなっていました」
食事に関しては「誤って食べてしまった」というケースもあるが、おやつに関してはかすめ取っていく感じだったという。
「子どものおやつを何でも欲しがるなんて、なんて大人げない人なんだと、小さい頃から感じていました。父が結婚する前から、実家できょうだいからもおやつをかすめ取っていたようです」
断ると、「お父さんもうお前の面倒なんか見てやらないぞ」と脅されたり、突然機嫌が悪くなって怒鳴られたりもしたという。
そのような父も「後で食べるから」「これは私のだから食べないで」と事前に伝えておくことで、食い尽くしは減ってきたという。
また、最近は、父親か粕屋さんに好きな食べ物や飲み物を分けてくれることもよくあるそうだ。
●今でもおやつは目の届かない場所においてある
粕屋さんは、これまでに奪い取られた中でも、特に悲しかった記憶は「アイス」だったと振り返る。
娘のおやつを食べてしまう父親(Flatpit / PIXTA)イメージです
「分けて食べられないものは、特に悲しかったです。そういうものは、全部食べ尽くすのではなくて、『お父さんにもちょっとよこせ』と言うんです。それを拒否すると、脅しが入りました。
今でもおやつは危ないので、見せないようにしています。また先に、父の分を取り分けておくこともあります」
この父親は母親の実家に行っても、断りなく持ち帰った事は1度もないものの、残った食べ物を全部持って帰ることもあったそうだ。
●食い尽くし系の理由は「他人の気持ちや状況を想像するのが苦手」?
粕屋さんは、父親がなぜ「食い尽くし系」になったのか思いをめぐらせる。
「父は目に入ったものに手を出さずにはいられない(刺激に弱く、他人の気持ちや、状況を想像するのが苦手)。また、戦後すぐの生まれで、食べ物に苦労した経験も、関係していると思います」
粕屋さんによれば、父親には発達障害の傾向や毒親だった傾向もあるため、その延長線上にあるのかもしれないという。
「食い尽くし系の人たちは、育った環境などの関係で、全体的に自己肯定感が低かったり、精神的に幼い人が多い気がします」
「あくまで私のやり方ですが、食べ物を父にも分けたり、一緒に食べたりすることで、父の中にある疎外感や低い自己肯定感が消え、幸福度が上がったのか、食への執着や強引な行為は減りました」
こうやって「食い尽くし系」の問題が取り上げられ、根底にある問題に目を向けることで、同じ悩みを抱えている人たちの助けになればと考えている。