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ケンタッキーフライドチキン、エイプリルフールで「詰め放題やるよ」 騙されて駆け付けた人の交通費どうなる?
KFC(shi / PIXTA)

ケンタッキーフライドチキン、エイプリルフールで「詰め放題やるよ」 騙されて駆け付けた人の交通費どうなる?

ケンタッキーフライドチキン(KFC)の公式Xが4月1日10時、「4月1日限定でチキンの詰め放題を開催いたします」と投稿。1万1000回以上リポストされるなど話題となっている。

同投稿には、「時間:夕方4時1分開始 場所:KFC店舗 人数:限定41名 価格:¥401」と4と1をちりばめた具体的な記載とともに、詰め放題に参加しているかのような様子が映った画像が添えられている。「参加したい人はリポスト」と呼びかける一方、末尾には「#エイプリルフール」とハッシュタグがついている。

その後、同アカウントは同日15時30分に「今回はエイプリルフールの企画のため、実際の店舗での開催は予定されておりません」とネタばらし。実際には開催されないイベントだったわけだが、最初の投稿に騙されて、すでに店に駆けつけてしまった人もいるかもしれない。

もし鉄道やバスでお店に行った人は交通費が発生してしまうが、「嘘ネタ」なら法的な問題は生じないのだろうか。西口竜司弁護士に聞いた。

●駆けつけてしまった客の交通費「損害になる可能性も」

そういえば、今日はエイプリルフールでしたね。仕事柄、嘘をついたらまずいのでポストはしていませんが。

今回のケンタッキー(KFC)の件では、値段みたら401円、詰め放題でこれはかなりお得ですよね。普通に得だから買いに行こうと思っても不思議ではないかなと思ってしまいます。Xの文化を知っている人であれば末尾の「エイプリルフール」というハッシュタグを見逃さなかったはずですが、中には見落としてしまった人もいるかもしれませんね。

仮に、交通費を出してお店に出掛けてしまった場合、法的にはどうなるのでしょうか。

まず問題となるのは、民法709条に規定している「不法行為」に当たるかどうかです。

エイプリルフールとはいえ、客が真に受けてしまうような誤解を招くようなポストをすべきではなかったとして、過失が認められる可能性があります。

そして、客側としては、KFCの不注意で交通費という費用を支出したのに商品を買えなかったとしたら、KFCの行為と交通費の出費という損害の間には因果関係も認められることになりそうです。

したがって、今回の件でKFCは交通費を出してしまった客に対して損害賠償責任を負う可能性もありそうです。

また、KFC側は自分たちのポストが事実ではないことをわかっていたわけなので、当該ポストは自己の真意と表示行為の内容との食い違いを自覚しながらおこなう意思表示である「心裡留保」(民法93条)に当たる可能性もあります。

心裡留保ならば、その意思表示は「有効」とされます。意思表示に応じた客に対して一定のサービス提供義務が発生し得ます。

もちろん、ポスト内容が現実離れしており、誰でも嘘だとわかるような内容だったら、ポストを有効とする必要もなくなります。そのような場合には心裡留保であっても意思表示は「無効」となります(民法93条ただし書き)。

今回のケースは、ある程度具体的なイベント内容が書かれていて、ありそうな話で信じてしまいそうだったから問題になったようですね。もう少しわかりやすい「嘘ネタ」にしても良かったかもしれません。

ただし、末尾に「#エイプリルフール」のハッシュタグがあるので、一般人が通常の注意をしていれば気づきそうですから、損害賠償が認められる可能性があると言っても、現実的にはかなり低いと思います。あわててお店に行った人がいないことを祈るばかりです。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

西口 竜司
西口 竜司(にしぐち りゅうじ)弁護士 神戸マリン綜合法律事務所
大阪府出身。法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。弁護士YouTuberとしても活動を開始している。今年からXリーグにも復帰した。

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