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税理士会支部の上司から性暴力、元職員の女性が逆転勝訴 代理人「同様の被害者に勇気与える判決」
記者会見で東京高裁の判決について話す原告代理人の(左から)長谷川悠美弁護士、青龍美和子弁護士、笹山尚人弁護士(2024年2月22日、東京・霞が関の厚労省記者クラブで、弁護士ドットコムニュース撮影)

税理士会支部の上司から性暴力、元職員の女性が逆転勝訴 代理人「同様の被害者に勇気与える判決」

東京税理士会神田支部で働いていた40代女性が、男性上司から性暴力被害を受けてPTSDを発症し、その後解雇されたとして、同支部と男性を相手取り、慰謝料などを求めた裁判の控訴審で、東京高裁は2月22日、請求を棄却した1審判決を破棄して、計約407万円の支払いを命じる逆転判決を言い渡した。

女性の代理人は判決後、東京・霞が関の厚労省記者クラブで記者会見を開き、「同意がなければ、性行為は不法行為なのだということを東京高裁が正面から明言したことは評価に値する。同様に被害に苦しんでいる方たちにも勇気を与える判決になった」と話した。

●当時の総務部長から「同意なく性的行為を受けた」と主張していた

訴状によると、東京税理士会神田支部の正職員として総務部の事務を担当していた女性は2019年8月、支部の総務部長(当時)と食事をしたあと、事務所で同意なく性的行為を受けたとしている。

女性はPTSDの診断を受け、2019年10月から休職。翌2020年4月からの復職を希望したが、支部との面談で役員から「(復職後に支部の構成員から)露骨に変な態度をされるかもしれない」などと言われ、再度体調を崩したという。

その後、支部側に6月1日からの復職を命じられたが、職場環境の改善などを求めたところ、命令に従わなかったとして解雇された。

●東京高裁「同意のない性的行為があったとの評価を免れない」

裁判では主に(1)同意のない性的行為があったか、(2)性的暴行についての支部の責任、(3)面談での役員の発言の問題、(4)解雇の有効性ーーが争点になった。

1審の東京地裁は「(上司の男性が)社会的地位をなげうってまで性的暴行をするとはにわかに考えがたい」などとして原告の訴えを退け、女性は(1)〜(4)のいずれの点でも敗訴していた。

しかし、東京高裁は(1)について「(上司の男性が女性に)性的関心を抱き、性交まで進む意図の下に徐々に性的行為をエスカレートしていく形で一方的に行ったものであると推認され、全体として同意のない性的行為であったとの評価を免れない」として、上司の不法行為を認め、約357万円の賠償を命じた。

また(3)について、「復職の可否判断に必要な事実確認を行うという本来の目的からは逸脱」「人格権侵害に当たる」として、支部に慰謝料50万円の支払いを命じた。

(2)の支部の責任は、「支部が安全配慮義務を負うべき場面において行われたものであると認められない」などとして棄却。(4)をめぐっては、「面談に起因して原告の体調が出勤できないまでに悪化したとは認められない」として解雇を有効と判断した。

●女性の母親「娘がこれから進んでいくために背をたたかれた」

判決後の記者会見に出席した女性の母親は、女性本人が性被害の影響で今も動けない状況であることを説明したうえで、こう語った。

「1審判決は本当にショックだったが、高裁で『同意のない性暴力だった』と認められ、娘がこれから進んでいくために背をたたかれた感じがする。どれだけの方が性暴力で辛い思いをしているのかと思うと心の底から震える」

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