人気ラーメン店の店主が、ライスを残した客について「二度と来るなゴミクズが」と怒りのままX(旧ツイッター)に投稿した。
その後、批判されたことで「絶対に言ってはいけない言葉」だったと謝罪したうえで、投稿を削除するに至っている。
ライスは「おかわり自由」のセルフサービス。3年前の開業当初から、客に腹いっぱいになってほしいと利益無視で始めた取り組みだったが、あまりに残されることが続いたため、今年に入って100円を取るようにしたばかりだったという。
店主によると、ラーメンの材料費は開業3年で1.5倍以上に上がったという。経営的に厳しい。それでもごはんの食べ残しはなくならない。冷静さを取り戻した店主が取材に苦悩を語った。(ニュース編集部・塚田賢慎)
●「ご飯を残されるのがあまりにも悲しくて悔しく」
Xへの投稿が物議を呼んだのは、千葉県習志野市のラーメン店「横浜家系ラーメン 蓮 京成大久保」だ。店のアカウントが12月5日、ほとんど食べ残したごはんと漬物が入った茶碗の写真とともに、「死んでください本当に そそくさと逃げるように帰るなよ 自分でよそってんだぞ 二度と来るなゴミクズが」と投稿した。
客に使う言葉ではないなどの批判が殺到したことから、「いかに無駄を無くしてお客様にたくさん食べてもらいたいかを第一に考える中で、ご飯を残されるという行為があまりにも自分の中で悲しく悔しくて」と改めて投稿で謝罪した。
店主の渡邉涼輔さんは12月7日、弁護士ドットコムニュースの取材に答え、開店からずっと「食べ残し」に苦悩してきたと振り返る。
店では、2020年6月の開店当初から今年3月まで「無限ライス」として、ごはんや漬物、カレーなどをセルフサービスで提供してきた。
客の約8割がラーメンと一緒にライスを食べるそうだ。無限ライスは利益を狙わず、ほぼ赤字だったという。
【マジのお願い】
— 横浜家系ラーメン 蓮 京成大久保 (@ren_yokohama9) December 22, 2020
無限ライスを残さないでください。
最近残しが多すぎます。
おかわり自由で残すって意味不明です。
このままだと継続できません。
原価がどうとかじゃなく、モラル無さ過ぎです。
きちんとルールを守って食べていただいているお客様に失礼です。
皆様のご協力をお願いします。 pic.twitter.com/4U7IkChN50
しかし、ごはんを残されることが繰り返されたため、2020年12月にもTwitterで苦言を投げかけている。
「無限ライスを残さないでください。最近残しが多すぎます。 おかわり自由で残すって意味不明です。 このままだと継続できません。 原価がどうとかじゃなく、モラル無さ過ぎです。 きちんとルールを守って食べていただいているお客様に失礼です。」(当時の投稿)
渡邉さんによると、この投稿は賛同を得たほか、テレビ番組のフードロス特集で紹介されるなどの反響もあったという。
その影響もあったのか、ごはんを残す人は多少減ったが、それでもなくなることはなかった。
そこで、有料にすれば残さなくなるだろうという期待を込めて、100円を取ることに踏み切った。これも利益狙いではないという。
店内
「無料だからとりあえず食べてみて多ければ残すという人がいた。そこで有料にしたら、今度は逆に金払ってるんだから残してもいいだろうと考える人がいるようです」
今回炎上した投稿は、2〜3日の間に立て続けにごはんを残されることがあったため、積もり積もった不満が爆発し、感情のままにやったそうだ。
冷静さを取り戻した渡邉さんは「あの投稿は自分が100%悪いです。Xにも『強い言葉』ではなくて『使ってはいけない言葉』ですという指摘があって、それはその通りです。反省しています」と改めてお詫びを口にする。
とはいえ、まだまだ向き合っていかなければいけない問題だ。
●「残したら追加料金いただきます」の張り紙、それでも
今回の批判の中には、残さないでと掲示していないのか、ペナルティを設けていないのか、そもそも無料のご飯がまずいのだろうという指摘もある。
店では張り紙を複数用意し、「ごはんやお漬物を残さないで」「残したら一律で追加料金をいただきます」と明示している。渡邉さんは千葉県産の米にも自信があると話す。
無限ライスの張り紙(左)とセルフコーナー(右)
それでも、残す人は残す。だからといって、実際に追加料金を求めたことはない。残してほしくないから掲示しているだけだ。
「米の値段はじわじわ上がっているし、ラーメンの原材料は去年の比じゃないくらいに上がっています。下がったものなんてひとつもなくて、経営的にもきつい」
店で出している米
渡邉さんの苦悩は続きそうだが、常連客の応援や同業者からの共感のDMが励みになっているという。
「大多数の方は残さず食べてくださっているので、無限ライスは100円のまま継続しようと思います」