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興味本位で女子選手を「撮影」してはいけない!浦和レッズの「新ルール」をどうみる?
なでしこジャパンの活躍で、女子サッカー界が盛り上がっている

興味本位で女子選手を「撮影」してはいけない!浦和レッズの「新ルール」をどうみる?

サッカー女子日本代表「なでしこジャパン」に選ばれた猶本光(なおもと・ひかる)選手(20)に、大きな注目が集まっている。整った顔立ちから、美人アスリートとして評判だ。しかし、彼女が所属する浦和レッズレディースは5月下旬、女子選手の写真等の撮影を厳しく制限すると発表して、話題を呼んだ。

公式サイトによると、女子のトップチームについて、練習場付近での撮影が禁止とされた。さらに、女子のユース(中学3年生から高校3年生まで)とジュニアユース(中学1年生から2年生まで)は、あらゆる場所で撮影禁止とされている。

また、公式戦については、「試合の進行を妨げるようなもの」や「興味本位で女子選手を撮影すること」などに該当する撮影は禁じられた。違反者が出た場合、すべての写真撮影やファンサービスを禁止すると警告している。

このような「撮影禁止ルール」の背景には、一部のファンによる過剰な撮影など、迷惑行為があったようだ。とても厳しい措置のようだが、もし仮に浦和レッズのルールを破って女子選手を撮影した場合、法的に問題とされることもあるのだろうか。佃克彦弁護士に聞いた。

●「肖像権侵害」はレッズのルールとは別問題


「ルールを破って選手を撮影した場合、肖像権侵害の問題が生じる余地がありますね。ただ、肖像権の侵害になるかどうかは、レッズの定めたルールに反したかどうかで決まるわけではありません」

肖像権侵害は、どんな基準で決まるのだろうか?

「どういう状況でどのような映像を撮られたのかといった具体的状況をふまえたうえで、『選手(本人)が我慢すべき限度を超えたかどうか』となります」

どんな状況なら「我慢の限界を超えた」ことになるのだろうか?

「たとえば、観客の入った試合中の姿は、他人に見られることが前提ですから、それを撮影することが本人の我慢の限度を超えるとはいえません。肖像権侵害になる可能性は低いと思います。

一方で、選手がクラブハウス内でリラックスしているような姿を撮るのは、『必ずしも公開を前提とした姿ではない』とされて、肖像権侵害とみなされる可能性が出てくると思います」

すると、試合中で、写真撮影が許可されている場合なら、肖像権の侵害にもならないのだろうか?

「サッカーは動きの激しいスポーツですので、試合場面や角度によっては選手が公開してほしくないような画像が撮れてしまうこともあります。そういう写真を公開したなら肖像権侵害、場合によってはプライバシー侵害になる可能性が出てくるでしょう。

また、公式戦について、レッズが『興味本位で撮影すること』を禁止したのは、その種の写真が撮影・公開されることを牽制しているのでしょう。

また、たとえ試合中の撮影であったとしても、その写真を無断で商業的に利用した場合は、パブリシティ権という別の権利を侵害する可能性があるので注意してください」

●違反者は「撮影禁止」になっても文句を言えない

そうすると、今回レッズがルールを定めた狙いは、どこにあるのだろうか。

「今回のレッズの定めは、違反者の法的責任を追及するためのルールではなく、ルール違反をした人に対して撮影を許可せず、サイン等のファンサービスをしないという決めごとです。肖像権侵害の問題とは、切り離して考える必要がありますね」

チーム側が決めたルールに対して、文句は言えないのだろうか。

「こうしたルールを定めること自体は法的に有効です。違反した人が今後の撮影を禁止されることはあり得ますし、禁止されたことに対して文句を言うのは難しいと思われます」

(弁護士ドットコムニュース)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

佃 克彦
佃 克彦(つくだ かつひこ)弁護士 佃法律事務所
1964年東京生まれ 早稲田大学法学部卒業。1993年弁護士登録(東京弁護士会) 著書に「名誉毀損の法律実務〔第3版〕」、「プライバシー権・肖像権の法律実務〔第3版〕」。日本弁護士連合会人権擁護委員会副委員長、東京弁護士会綱紀委員会委員長、最高裁判所司法研修所教官を歴任。

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