動画を見たファンからお金を集めて、制作者の新たな資金源にする。グーグルは、動画サイト「YouTube」にそんな機能を搭載することを計画していると、明らかにした。これまではYouTubeに動画を投稿しても、広告収入しか得られなかったが、この機能が搭載されれば、クリエイターを支える新たな仕組みが生まれる。
このようにインターネット経由で多くの人から少額の資金を集める仕組みは「クラウドファンディング」と呼ばれている。資金難に苦しんでいる映像クリエイターやベンチャー企業にとっては、大きな「武器」になる可能性を秘めている。
このほかにも、クラウドファンディングそのものを目的としたプラットフォームがいくつも存在していて、さまざまなプロジェクトへの資金提供を募っている。ただ、お金がからんでいる以上、税金とは無縁ではなさそうだ。そのあたり、どうなっているのか。古尾谷裕昭税理士に聞いた。
●「寄付型」は贈与税がかかる可能性も
「クラウドファンディングは、出資者にどのようなリターンがあるかによって、次の3種類に分けられます。
(1)出資したプロジェクトの収益の一部など、金銭的なリターンを目的とした『投資型』
(2)金銭的なリターンも得ることは求めない『寄付型』
(3)物品の贈呈やイベント招待など、金銭以外のリターンを得られる『購入型』」
古尾谷税理士はこのように説明する。それぞれのパターンには、どのような特徴があるのだろうか。
「最初の『投資型』については、出資を受ける側が、金融商品取引法に基づく登録をする必要があります。そのため今のところ、あまり活用されていません。現在、要件緩和のための法整備がおこなわれているところです」
では、リターンのない「寄付型」については、どうだろうか。
「税金の面でいうと、出資を受ける側が法人の場合は『法人税』、個人の場合は『所得税』か『贈与税』の対象となります。この点に注意が必要ですね」
実際に、課税対象となる条件は?
「所得税は年間50万円、贈与税は年間110万円までが非課税とされているので、この額を超える場合に課税されることになります」
寄付というと、寄付した人が「寄付金控除」を受けられるケースもあると聞くが、クラウドファンディングの場合はどうなのか。
「クラウドファンディングで出資しても、残念ながら、寄付金控除の対象にはなりません。寄付金控除は、国や地方公共団体、特定公益増進法人などへの寄付が対象なのです」
クラウドファンディングで個人や民間の企業などに出資しても、寄付金控除の対象にはならないというわけだ。
●「購入型」も贈与税の対象になる可能性あり
では、最後の「購入型」は、どのようなものだろうか。これは、出資へのリターンとして、何らかの商品やサービスが提供されるものだ。
「『購入型』の場合は、出資を受ける側が法人の場合は『法人税』、個人の場合は『所得税』の対象になります。また、出資額が、リターンである商品やサービスと比べてあまりにも高額である場合、『寄付型』と同様に、贈与税などの対象となる場合がありますので、その点に注意が必要です」
政府による法整備なども進んでいて、今後、クラウドファンディングの活用は本格化するだろう。ただ、複数の種類があり、それぞれ課税のルールも異なるため、どんなタイプを活用したらいいのか、しっかり見極める必要があるだろう。
【取材協力弁護士】
古尾谷 裕昭(ふるおや・ひろあき)税理士
会社設立実績4000社の起業支援に特化したベンチャーサポート税理士法人。「親切・丁寧・迅速に」をモットーとしてわかりやすい会計サービスを提供するほか、マーケティングや経営全般について起業家・経営者のサポートを行う。経済誌や業界紙を中心にメディア掲載実績多数。
事務所名 :ベンチャーサポート税理士法人
事務所URL:http://www.venture-support.biz/