電車の乗り降りなどの際、他の人の足を踏んでしまった、あるいは踏まれたことがあるという人は少なくないのではないでしょうか。
通勤時間帯はとくにそうですが、車内のイライラは溜まっているものです。わざとでなくても、ぶつかられたり、足を踏まれると激しく怒る人もいます。
「電車でよろけて、座っている乗客の足を踏んでしまった。相手に謝ったけれど、納得してもらえず、連絡先を交換するはめになった」
弁護士ドットコムにはこんな相談も寄せられています。もしケガをしていた場合、治療費を請求されても仕方ないのでしょうか。萱垣建弁護士に聞きました。
●原則、踏まれた人がケガしたら治療費を支払う必要がある
電車でよろけて、他の人の足を踏んだ場合、踏まれた人がケガをしたなら、その治療費などを支払う義務が生じます(民法709条)。
ただし、義務が生じるのは、故意で(わざと)やった場合、または過失(うっかり)がある場合です。
したがって、電車が予期しない急ブレーキをかけたため、他の人の足を踏んだ場合などは、過失がないとして、治療費を支払う義務が発生しないこともありえます。
たとえば、足を踏んだとしても、つり革につかまっていたり、しっかりと足を床につけて通常の揺れでは倒れないようにしていたケースが考えられます。
●つり革につかまらず踏んだ場合「過失傷害罪」が成立する余地がある
警察沙汰になるかどうかですが、他の人の足を踏んだ場合、暴行罪や傷害罪が問題になります。わざと踏んでいない場合は、暴行罪や傷害罪にはなりません。
ただ、わざとではないけれど、つり革につかまっていなかったなど、過失がある場合で、相手がケガをしたときには、過失傷害罪が成立する余地があります。
ただし、この過失傷害罪は、被害者が刑事告訴しないと捜査は始まりません。告訴されて、起訴された場合には、30万円以下の罰金または科料という処罰を受ける可能性があります。