定食屋で「男性よりも、ご飯の量を減らされた」という女性の怒りの投稿がネット上で話題になっている。
同じような経験をした女性は少なくないようだ。会社員の女性J子(都内在住)さんが、会社の男性同僚たちとランチした和食店でも、J子さんだけ、定食のご飯の量が明らかに少なかったという。
「最初にご飯の量を聞かれることもなかったので、驚きのあまり、同僚と顔を見合わせてしまいました。同僚は2人とも痩せ型体型、私は正真正銘の中年体型なので、明らかに食べそうなのは私だったんですが…」
同じ料金を支払っているにもかかわらず、ジェンダーによって、ご飯の量に差をもうけることは法的に問題ないのか。寺林智栄弁護士に聞いた。
●憲法が定める「法の下の平等」に違反しないかが問題
ーーご飯の量に差をもうけることは、法的に問題ないのでしょうか。
今回のケースでは、女性という理由による不当な差別に該当するかどうか、すなわち憲法14条の『法の下の平等』に違反しないかということが問題になります。
まず、そもそも憲法は国と国民の関係を規律するものなので、これが私人間(個人と個人や、個人と会社、会社と会社など)にも適用されるかが一応問題となります。
これについては、民法上の一般原則を媒介して適用されるというのが通説になります。また、一定の事情に基づく差別的取り扱いは、合理的な理由がない場合には憲法14条違反となるといわれています。
そこで、今回のケースでは、「同じ料金を払っているのに、女性だけご飯の量を少なくすることには合理的な理由がなく、憲法14条違反にあたるか」が問題となります。
ーー今回のケースは、合理的な理由があるといえるのでしょうか。
論者によって考え方は分かれるかもしれませんが、私は、合理的な理由がないとまではいえない、すなわち、憲法14条違反とまではいえないのではないかと考えています。
たしかに、オーダーの際に「ご飯の量は普通通りでよいですか」などと店側が女性客に尋ねることや、ご飯を減らした分料金を割り引くことが道義的には求められるでしょう。
しかし、定食屋は一般的にご飯の量が多く、女性が残すことも少なくないという事情があるのではないでしょうか。ランチ時の忙しいときに、いちいち客に確認を取ることを一般的に求めるのも難しいように思われます。
そのため、定食屋側が気を利かせて、あらかじめ女性客のご飯の量を減らすことについて合理的理由がないとまではいえないように思われます。
J子さんにとっては不本意かもしれませんが、次回このお店に行くときには、ご自身のほうから「ご飯は普通盛で」と言ってみると良いかもしれません。