弁護士ドットコム ニュース
  1. 弁護士ドットコム
  2. 民事・その他
  3. 親との絶縁願う宗教2世…結婚後も迫り来る母、住民票の開示制限もできず
親との絶縁願う宗教2世…結婚後も迫り来る母、住民票の開示制限もできず
体験を語るBさん(弁護士ドットコムニュース撮影)

親との絶縁願う宗教2世…結婚後も迫り来る母、住民票の開示制限もできず

安倍元首相の銃撃事件をきっかけに、親が新興宗教にはまってしまった「宗教2世」の苦悩が取り沙汰されている。弁護士ドットコムニュースには、LINE公式アカウントでの体験談募集をきっかけに、手をかざして幸福を祈る新興宗教の2世が不遇な子供時代について語ってくれた。愛情を注がれなかったという彼らは、それぞれ今の家族を守るために「親と縁を切りたい」と切に望んでいる。

●いじめられたり笑われたりした記憶は一生消えない

取材を受けてくれたのは、いずれも関東地方に住む40代のAさん(男性)とBさん(女性)。現在も70代の母親が入信している。

この宗教では、住宅地の各家を回る布教活動をしている。2人とも「手をかざさせてください」と、小学生時代にピンポンしては冊子を配ることを強いられた経験に、強いストレスを感じていたという。

Aさんの母親は、父親の事業の失敗などで悩みを深めて入信した。「あなたも入ってくれなかったら自殺する」と懇願され、小学生で自分も入った。「信者と一緒に行動するのを見られると恥ずかしかった。気持ち悪いと陰口をたたかれ、いじめられる。身に付けなければならないペンダントは、体育の着替えの時に見られないように神経を使っていた」と明かす。

転機が訪れたのは、高校時代。暴力や罵声にまみれていた家庭とは違う価値観を知った。いい家庭に育っている周囲が羨ましかった。団地の5階からペンダントを投げ捨てた。「比べちゃいけないなんて言われますけど、貧乏でも愛情さえあれば良かった。青春時代を台無しにされた。いじめられたり笑われたりした記憶は一生消えない」

大学進学と同時に実家を出ることができ、2008年に結婚してからは、父母とはほとんど会っていない。法律相談に行ったが、血縁は完全に切ることができないと分かり、絶望した。本当は親に慰謝料請求をしたかったものの、時効や証拠等もそろわないことで断念した。せめて自分に何かあった時に、遺産が親にいかないよう公正証書を作った。

Aさんは言う。「僕はたまたま勉強ができて、今も経済的に自立できているから、こうして闘うことができる。精神科医に言われました。あなたのような境遇なら、犯罪者になるか自殺するかだと」

Aさんが親と縁を切るためにつくった公正証書

●幼い妹と自宅に放置され、学校にも通えず

一方、Bさんの母親も、ギャンブル好きで浮気を重ねる父親との関係で悩んでいたことがきっかけで入信した。「社宅でのいづらさもあり、宗教に逃げたんだと思います」。小さい子を道場に連れて行くことはできないと理由付けして、当時6歳だったBさんと妹は自宅に放置された。学校にはほとんど行けなかった。

外面を気にする母親は熱心に宗教活動はするものの、家をまったく顧みなかった。Bさんも道場や行事に参加させられていた。教えには「全ての人を許しなさい」とあるのに、災害で亡くなった人を信仰が足りないからだと否定したり、修行に来ない人をののしったりする雰囲気が理解できなかった。

つねられたり、ぶたれたりすることは日常茶飯事で、高校生の時に崖から飛び降りようとしたこともある。けがをして未遂に終わったが、血を流して帰っても「みすぼらしい格好。ばかなことやめて」としか言われなかった。

Bさんは25歳の時に結婚、高校生の娘がいる。金を無心し続けた父は亡くなったものの、母は今も接触を図ってくる。住民票の開示を制限させるDV支援措置を応用できないか役所に頼んでみたが、実の親では無理だと断られた。

「夫や娘がいて初めて『愛して愛されること』を知りました。今の自分と家族を守りたいけれど、解決の糸口が見つかりません」。法律相談にも行ったが、血縁に基づいた制度の矛盾を感じざるを得ないという。

●相談できる場所をつくってほしい

2人が口をそろえて言うのは、支援組織や相談窓口の開設だ。銃撃事件を機に声をあげる2世が増えているが、抜本的な解決策を教えてくれる場所が見つからないという。

「父の日や母の日は嫌いです。親を敬えという風潮にはついていけない。悩んでいても、自分一人の力じゃどうにもならない。子ども時代に社会と断絶してしまっているから、NPOやシェルターといった情報にたどり着けない人が多いと思います」(Aさん)

Bさんは「母は逃げ込んだのが新興宗教だったけれど、何らかの精神的な病を抱えていたんだと思います。ネットが普及し、同じ思いを抱えている2世がこんなにいるんだと知ることができました。私が勇気を出して経験を語ることでもっと理解が広がり、2世を救うための政策や組織をつくるきっかけにしてほしいです」

(相談窓口の一部)
宗教2世ホットライン https://www.niseihotline.com/home
全国霊感商法対策弁護士連絡会 https://www.stopreikan.com/
日本脱カルト協会 http://www.jscpr.org/
真宗大谷派青少幼年センター https://jodo-shinshu.info/oyc/cult/
全国統一教会(協会)被害者家族の会 http://e-kazoku.sakura.ne.jp/

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

オススメ記事

編集部からのお知らせ

現在、編集部では協力ライターと情報提供を募集しています。詳しくは下記リンクをご確認ください。

協力ライター募集詳細 情報提供はこちら

この記事をシェアする