ロシアで昨年、「同性愛宣伝禁止法」という法律が成立した。これは、18歳未満の未成年者に「非伝統的な性的関係」を知らしめる行為を禁止し、違反した者には罰則を科すという内容だ。
国際的には、同性愛者の権利を認める動きがしだいに広がりをみせている。今回、それに逆行するようなロシアでの動きに対して、欧米各国のみならず、日本でも抗議の声があがっている。
では、日本における同性愛者をめぐる法整備の状況は、海外と比べてどうなのだろうか。今後、ロシアのような法律が、日本で成立する可能性はあるのか。同性愛者の法律問題にくわしい藤元達弥弁護士に聞いた。
●日本には「同性愛者の権利」を擁護する法律がない
「欧米などには、同性婚や同性間のパートナーシップ制度を認める法律、その他同性愛者の権利を積極的に擁護する法律を整備している国もあります。
しかし、日本には、こうした法律が一切ありません。
つまり、いまの日本は、同性愛者を対象とした法整備が全く行われていない、という状況です」
たとえば、同性婚が認められていないと、何か問題があるのだろうか?
「同性カップルは、婚姻によって受けられる社会保障や税制上の優遇を、全く受けられません。
また、相続などの場面でも、婚姻の代わりに、養子縁組、遺言、任意後見など、ほかの制度を利用せざるをえない状況になっています。
しかし、これらの制度は、もともと同性カップルを対象と想定して作られたものではありません。同性カップルにとって不十分な制度であり、結果的に問題が生じることがあります」
同性のカップルにとって、日本は暮らしやすい国とはいいがたい面があるようだ。
●「同性愛行為を禁止すべきだ」という主張も多くない
「一方、日本には、同性愛行為を禁止する法律もありません。
海外では、ロシアのように、同性愛を否定的にとらえた法律を制定している国もあります。なかには、同性愛行為を禁止し、刑罰を科す国すらあります」
そういった国々と比べれば、状況はましと言えるのだろうが・・・。今後、国内での議論はどちらへ向かうのだろうか。
「同性愛行為を法律で禁止すべきだという主張は、いまの日本では、さほど多くないですね。
しかし、伝統的な家族観を重視し、同性愛を否定的にとらえる人たちは、日本にもいます。今後、ロシアのように、同性愛を抑制しようとする法律ができる可能性も、ないとはいえないでしょう」
藤元弁護士はこのように憂慮していた。