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電子タバコが火をつけた隣人トラブル、調理の匂いすら「くーさーい」猛烈クレームに発展
(左)sasaki106 / PIXTA(右)Ran&Ran / PIXTA

電子タバコが火をつけた隣人トラブル、調理の匂いすら「くーさーい」猛烈クレームに発展

「向かいの家から毎日『臭い、臭い』と言われてもう我慢の限界です」。このような隣人トラブルに悩む女性からの相談が弁護士ドットコムに寄せられています。

相談者の女性は一軒家に住んでいます。引越し当初、窓を少し開けて電子タバコを吸っていましたが、向かいの家の子どもが「臭い」と叫んでいたので窓を閉めて吸うようになりました。

しかし、窓を閉めても毎日「臭い、臭い」と大騒ぎしています。料理を作っているだけでも向かいの家の母親と子どもが「く〜さ〜い」と叫んでくるそうです。

そのため、大きな声で叫ばれるので買ってきた冷たいお弁当しか食べられていない状況になってしまったといいます。

隣家にどのように対処すべきでしょうか。田村ゆかり弁護士に聞きました。

●迷惑な「匂い」の基準はある?

ーー電子タバコや調理など日常生活で出てしまう「匂い」について、法的に問題があるとされる基準はあるのでしょうか

工場その他の事業場から発する悪臭については、悪臭防止法で指定された悪臭物質の排出が抑制されており、都道府県は悪臭を防止する必要があると認められる場合一定の要件を満たせば事業場等に対して改善勧告や改善命令などの是正措置を講ずることとされています。

これに対して一般家庭からの匂いについては明確な定めがあるわけではありませんが、参考になる裁判例をご紹介します。

隣家の窓から風呂の臭気、トイレの臭気、魚や豆を調理する臭気が漂う等として隣家の窓の取壊し等を求めた裁判(東京地裁平成4年1月28日判決)において裁判所は、「近隣者間において社会生活を円満に継続するためには、…社会的受忍の限界を超えた生活侵害のみが、違法なものとして、不法行為による差止請求や損害賠償の対象となるものと解するのが相当である。」とした上、臭気は受忍限度を超えないとして原告の請求を認めませんでした。

もう一件裁判例をご紹介します。自宅及びその庭で野良猫に餌などを用意して居つかせたため隣家の庭が猫の糞尿で汚れ悪臭を発したという事案で、裁判所は砂利の入れ替えや洗浄等の必要が生じたことも含め精神的苦痛は大きいとして被告に対して50万円の慰謝料の支払を命じました(福岡地裁平成27年9月17日判決)。

ーー今回のケースではどう判断されますか

受忍限度を超えているか否かという基準からすると、匂いの程度はもちろん、一般的に悪臭と考えられる匂いの方が法的に問題とされやすいと言えます。匂いの程度が同じであれば、調理の匂いよりも苦手な人がいる電子タバコの方が問題とされやすいのではないでしょうか。

ご紹介した裁判例からすると、今回の事案は受忍限度内の匂いであると言えそうですが、いずれにせよ隣家の住人との話し合いにより関係を改善することが望ましいと言えます。

お互いで話をすることが難しければ、各地の弁護士会が設けているADR(裁判外紛争処理手続)や簡易裁判所への調停申立てなどが考えられます。まずは一度ご相談されることをお勧めします。

●住宅街でのトラブル防止のために何ができる?

ーー分譲マンションでは規約が細かく定められています。一軒家が立ち並ぶ住宅街でも「匂い」が発生する可能性がある行為についてルールを定めることはできるのでしょうか

たとえば分譲マンションについては管理規約が定められ、その中でさらに使用細則を定めて、「悪臭のある物品を専有部分に搬入及び貯蔵すること」を禁止事項とするなどしています。管理規約や使用細則は住民の合意により条項を新設したり変更することもできますので、匂いについてのルールを定めることができます。

今回の相談事例のように、一軒家が並ぶ住宅街では、例えば自治会など特定の地域の住民を構成員とする会において、その地域に適用されるルールを合意により定めるという方法が考えられます。

プロフィール

田村 ゆかり
田村 ゆかり(たむら ゆかり)弁護士 でいご法律事務所
沖縄弁護士会副会長。沖縄弁護士会破産・民事再生等に関する特別委員会委員。経営革新等支援機関。

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