恋愛支援に「壁ドン」教育、内閣府資料が波紋…そもそも「犯罪」にあたる可能性も
画像はイメージです(弁護士ドットコム撮影)

恋愛支援に「壁ドン」教育、内閣府資料が波紋…そもそも「犯罪」にあたる可能性も

手のひらを壁に強く当て、異性に迫る「壁ドン」。内閣府の研究会資料で、恋愛支援のための教育の一例として、「壁ドン」を組み込むことが提案されたところ、ネット上で波紋をよんでいる。「セクハラ」「暴力的」などの批判もあがっている。そもそも「壁ドン」は犯罪にあたらないのだろうか。大久保誠弁護士に聞いた。

●「壁ドン」で逮捕者が出たことも

話題になっているのは、4月7日に開催された内閣府男女共同参画局主催の「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」で、構成員の小林盾教授(成蹊大学文学部、社会調査研究所所長)が発表したプレゼン資料。

資料では「恋愛は『幸せのエンジン』かも」とはじめに述べたうえで、「恋愛チャンスに格差がある(恋愛格差)」と指摘。「ハンデを是正し、『恋愛弱者』にもチャンスを平等化するために『恋愛支援』が必要かも」としている。この支援の一例として挙げられたのが「壁ドン」や告白・プロポーズの練習などだ。

しかし、行為の態様などによっては「壁ドン」が「犯罪」にあたることもある。

2016年には、柵ぎわに両手をつき、女子高生が逃げられないようにして胸を押しつけたとして、30代男性が暴行容疑で逮捕され、「壁ドンで逮捕者が出た」と話題になった。産経WEST(2016年7月31日)によると、男性は酒に酔っており、「ナンパしようと思った」などと話していたという。

大久保弁護士によると、このケースでは男性が「胸を押しつけた」ことから、「不法な有形力の行使と言わざるを得ず、暴行罪が成立する」という。

「刑法208条の暴行罪が予定する『暴行』とは、人の身体に対して加えられた不法な有形力(物理的な力)の行使を意味します。直接人の身体に向けた物理的な暴力であって、殴ったり蹴ったりする場合はもちろん、他人を押して転倒させたり、衣服をつかんで引っ張ることも暴行に含まれます。

また、相手方の身体に接触しなくても、人に向かって物を投げつけたり、日本刀を振り回すなどの行為は、それが人体に直接的な危害を及ぼしうる限り、暴行罪が成立します。ただ、物理的な接触があった際にも、親愛の情を示す握手や、軽く腕をつかむ行為は暴行罪には該当しないと解されています」

●「嫌な思いさせた」ことを理由に暴行罪を認めた裁判例も

問題となったプレゼン資料には、ポケットに片手を突っ込み、片手を伸ばして「壁ドン」する若い男性の写真が掲載されている。まさに、少女漫画でみかける構図だ。

内閣府資料 公開されている配布資料『豊かで幸せな人生100年時代に向けた,恋愛の役割はなにか:恋愛格差社会における支援の未来形(小林構成員説明資料)』より抜粋

このような「壁ドン」の場合は、暴行にあたらないのだろうか。大久保弁護士は、次のように説明する。

「下級審判例の中には、ある労働争議に関して『必ずしもその性質上傷害の結果発生に至ることを要するものではなく、相手方において受忍すべきいわれのない、単に不快嫌悪の情を催させる行為』について暴行罪を認めたものもあります。この考え方によれば、『壁ドン』も暴行罪に該当しそうです。

しかし、このような考えに対しては、たとえば、相手方に唾を吐きかけるような行為も暴行罪の暴行に含めてしまうと、威力業務妨害罪にいう『威力』や軽犯罪法上の『迷惑行為』と区別できないという批判があります。

ちなみに、この下級審判例では、犯人が塩が入った壺の中から塩の塊を掴みだして、被害者に投げつけたものであり、有形力の行使と認定しうる事案でした。

こうしてみると、暴行罪の成立は難しいのではないでしょうか。

せいぜい、『公共の会堂…で入場者に対して乱暴な言動で迷惑をかけた』(軽犯罪法1条5号)、『他人の進路に立ちふさがって立ち退こうとしなかった』(同条28号)として、軽犯罪法違反の可能性がある程度だと思います」

プロフィール

大久保 誠
大久保 誠(おおくぼ まこと)弁護士 大久保法律事務所
ホームページのトップページに写真を掲載しているように、野球が趣味です。

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