小銭投げられた弁当屋、カスハラ問題を語る「態度が悪い客、お金払っていても貧乏神」
客が小銭を投げつけるシーン

小銭投げられた弁当屋、カスハラ問題を語る「態度が悪い客、お金払っていても貧乏神」

「金払ったら客だろうが、コラ、オイ」。深夜の店内に響く怒鳴り声。今年5月、都内の弁当店「キッチンDIVE」(亀戸)で酔った男性二人組と店員とのトラブルが起きた。店内ライブカメラには、客の片方が店員に向かって小銭を投げつけるシーンなどが映っており、テレビやSNSを中心に話題になった。

報道に対し、多くは店員に同情的だったが、客に反論するなどしてさらに怒りを買ってしまった店員の対応を疑問視する声も一部では見られた。

昨今、客からの暴言や暴行などのカスタマーハラスメント(カスハラ)が問題視されている。労働組合などからは、労働者が被害にあっても使用者側が対策に及び腰であるという報告もされている。

店やスタッフは客に対してどうあるべきなのだろうか。経営者はスタッフと客との間でどういうスタンスを取るべきなのか。キッチンDIVE店主の伊藤慶さんの考えを聞いた。

●話題になったがために誹謗中傷も

――報道にはかなり反響があったと思いますが…

テレビだけでも数十件の取材があったので、目にした人が凄く多かったと思うんですよ。それだけの人目に触れると、いろんな意見も出てきます。

大多数は小銭を投げつけるなんてひどいねで終わりだと思うんですよ。でも、数は少ないんですけど、いつまでもうちの粗探しをしていた人もいました。

中にはうちが「賞味期限切れの食材を使っている」と書き込んだり、「違法な営業をしている」といった話を行政やマスコミに持ち込んだりする人もいます。全部ウソですよ。

自分は20年ぐらい飲食関係の仕事をしていますし、ここ数年はツイッターやYouTubeでも発信しているので耐性がありますが、普通の人だったら大変だろうなと思いました。

――何か対策はとるんでしょうか?

こちらはSNSなどで事実関係を発信していますし、ほとんどの人はそれで納得してくれます。それよりも匿名の書き込みを信用するというのなら、そういう人はトラブルのもとなので、うちには来てもらわなくて良いと思っています。

ただ、いつまでも誹謗中傷が続くようなら対応を検討せざるを得ません。過去に警察や弁護士に相談して、ひどい書き込みをしていた人に謝罪文を書かせたことがあります。数回ぐらいの書き込みでは現実的には対応が難しい面もありますが、場合によっては今後も厳しく対応したいと考えています。

●動画があったから店員を守れた

――暴言を吐かれたスタッフには、なんと声をかけましたか?

「お疲れさん。落ち度はないんじゃない」というようなことを言ったと思います。

一般論として、飲食店などに問題のある店員というのはたしかに存在します。でも、そんな店員がいつまでもいたら店が成り立ちませんから、改善の余地がなければ、経営者としては辞めてもらわないといけない。

うちのスタッフの接客が完璧だとは言いませんが、「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」は言える。最低ラインは全員クリアしています。

毎日数百人のお客さんが来るんです。本当にうちのスタッフが問題だらけなら、毎日ケンカが起きていないとおかしいでしょう。でも、今までこんなトラブルはなかったんですよ。

そもそもうちは弁当屋で、接客は売りにしていません。レジでお金の受け渡しをするだけですから、お客さんに接する時間はファストフード店より短い。普通はトラブルになりようがないんですよね。

――店員を守ってくれない企業もありますが…

うちは動画があったのが良かった。たとえばスーパーなどにも防犯カメラはありますが、音声は記録していないこともある。トラブルになっても、店員と客のどっちが正しいか判断が難しいですよね。

日本人はクレームに弱く、揉めたがらない。動画がなかったら、僕も謝罪して返金していたかもしれません。そっちのほうが楽ですから。

●客は「神様」じゃなくて「パートナー」

――「お客様は神様」という文化に問題があると指摘されることもあります

三波春夫さんの発言が誤解されているんですよね。元々は神に捧げるような気持ちでないと良い芸はできないという趣旨だったはずです。さすがに神に捧げるような気持ちで弁当は作らないでしょう。

仮にお金を払えば神様なのだとしたら、僕たちが気持ちよく働けるお客様なら神様と言っても良いのかもしれません。でも、態度が悪いお客様はお金を払っていても貧乏神です。

クレーム対応は時間をとられます。場合によっては数日になる。でも、うちの店ではお客さんの買い物は2分で終わります。スタッフに辞められたら採用コストも凄く高いんです。

たしかに我々商売人はお客さんが払ってくれたお金で生活の糧を得ています。でも、お客さんだってそれぞれの店のサービスに生活を支えられている。そういう意味では「パートナー」と言えるんじゃないでしょうか。店を愛してくれる「パートナー」を増やしていきたいですね。

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