楽しみにしていた卒業式に「髪の色」のせいで参加できなかったとしたら、なんとも残念なことだろう。沖縄の県立高校で3月上旬、卒業生15人が髪の色を理由に式への参加を認められなかったとして、話題になっている。
沖縄タイムスによると、生徒たちはもともと髪の毛を染めていたが、その大半は式に備えて黒く染め直していた。ところが学校側は式当日の朝に「不十分だ」として、さらに染め直すよう指導。生徒が染め直しに行っている間に卒業式が始まり、戻ってきた生徒9人は会場にこそ入れてもらえたものの、卒業証書授与で名前は読み上げられなかった・・・ということのようだ。
学校側は「きちんとした黒髪でなければ駄目」「断腸の思いだが、ルールは守らなければならない」と話しているそうだ。一方で生徒や親は「基準が厳しすぎる」「度が過ぎている」と反発しているという。
そもそも学校は、生徒の髪の色を理由にして、卒業式への参加を拒否していいものなのだろうか。稲野正明弁護士に話を聞いた。
●現場判断として「やむを得ない措置」だったのか
「今回のケースについては具体的な事情がわかりませんので、あくまで一般論として、大枠の考え方について話します」
稲野弁護士はこう前置きしたうえで、次のように話す
「判断のポイントとなるのは、『学校長の措置が裁量権の範囲内であったのかどうか』です。
もう少しかみ砕いていうと、生徒を事実上、卒業式に出席させなかったともいえる措置が、『現場判断として、やむを得なかったといえるかどうか』。論点はこれに尽きると思います」
●卒業式に出席させるのは「当然のこと」だが・・・
たとえばどういう状況なら、学校の判断が「やむを得なかった」となるのだろうか。
「卒業生を卒業式に出席させるのは、よほど特別な事情がないかぎり、学校として当然のことです。ですから、そういう例外的な事情が今回の場合にあったのかがポイントでしょう」
その「例外的な事情」とは、たとえばどんなものだろうか?
「これはあくまで仮の話ですが、たとえば、その学校が髪の色の指導に、特に日ごろから力を入れていたとしましょう。
それにもかかわらず、学校・生徒にとって重要な行事である卒業式において、指導に違反している生徒の参加を許せば、学校長側がルール違反を容認していると受け取られかねませんね。
そうなれば、翌日からの教育指導の上で、看過できない弊害が生じかねないといえるかもしれません」
稲野弁護士はこのように述べ、「学校の判断が『やむを得なかったかどうか』について考える際には、その時点だけではなくて、そうなった経緯も含めて総合的に考える必要がある」と指摘していた。