「こんなおじいちゃんが欲しかった」。張り紙の写真とともに呟かれたこんなツイートが話題になっている。
ツイート主によると、若いクヌギが生えていて、カブトムシやクワガタがたくさんいる場所に「お願い」と題した張り紙が貼られていたという。張り紙には、以下のように書かれている。
「この場所は、7歳になる孫が虫取りするために木を植えている場所です。この紙が付いているときは、立ち入らないでください。毎回楽しみに眠いのを我慢してここへ来て、先に取られて悲しそうな顔の孫をもう見たくありません。孫の楽しみを奪わないでください! 地主」
ツイートは2.5万回以上リツイートされ、「山を誰かのものだと思ってない人多すぎる」「お孫さんどころか、近所のお子さんらにも優しいお爺ちゃんにほっこり」など様々な反応が寄せられていた。
春には勝手にタケノコを取る「タケノコ泥棒」がたびたび話題になるが、カブトムシやクワガタを勝手に捕まえた場合、法的な問題はあるのだろうか。好川久治弁護士に聞いた。
●森林窃盗罪の対象物とはならないが...
——カブトムシやクワガタを勝手に捕まえたら、法的な問題はありますか。
そもそも、他人が所有しない物は、窃盗罪の対象物(客体)にはなりませんので、何人の所有にも属さない野生のカブトムシやクワガタを採取しても森林窃盗罪は成立しません。
仮に、誰かが所有するカブトムシやクワガタであっても、森林窃盗罪の対象物は、森林の「産物」、すなわち立木や果実などの植物のほか、鉱物、岩石、土砂など森林から産み出される物である必要がありますので、森林に生息しているだけのカブトムシやクワガタは対象物とはならず、森林窃盗罪は成立しません。
●軽犯罪法に当たる可能性も
——今回の張り紙を見ると、「孫が虫取りするために木を植えている場所」と書かれてあり、地主がわざわざ木を植えて虫を呼び寄せて孫が採取できるようにしているようです
民法では、何人の所有にも属さない動産(野生のカブトムシやクワガタも含まれます)については、「所有の意思をもって占有」すれば所有権を取得できることになっています。
そのため、例えば、植えこんだ木の周りに囲い等があって、呼び寄せたカブトムシやクワガタを占有する意思がはっきりしている場合は、刑法の窃盗罪が成立する可能性があります。
なお、窃盗罪に該当しなくても、国の法律(自然公園法、種の保存法など)や地方自治体の条例で特定の地域、又は特定種類の希少昆虫の採取等が罰則で禁止されているものがありますので注意が必要です。
また、ツイッターの写真のように縄を張って立ち入りを禁止している私有地に勝手に入って採取すると、軽犯罪法の「入ることを禁じた場所又は他人田畑に正当な理由なくて入った者」にあたりますので、地主の許可なく立ち入ることはできません。