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2021年05月02日 08時51分

元社員を名乗って「宮のタレ」レシピがネットに掲載、法的な問題は? 運営会社は「営業秘密とは考えていない」

元社員を名乗って「宮のタレ」レシピがネットに掲載、法的な問題は? 運営会社は「営業秘密とは考えていない」
話題のレシピとステーキ宮のメニュー紹介(画像は編集部加工/https://www.miya.com/img/menu/pdf-grand.pdf)

ステーキやハンバーグが人気のレストラン「ステーキ宮」で使われているタレを再現したというレシピがツイッターで話題となった。

料理レシピサイトで公開したのは、元社員を名乗る投稿者だった。レシピには、材料、作り方(画像付、コツ・ポイント)が、誰でも簡単に作れるよう記されている。

もっとも、タレのレシピは、飲食店にとって、しばしば「秘伝」「秘蔵」と銘打たれるほど重要なもの。本家本元の公式「宮のたれ」は市販もされているものだ。

このレシピが公開されていることに対して、ツイッターでは「営業秘密の漏洩に当たる可能性はないのだろうか」という声があがっている。

●ステーキ宮側「把握しているが問題視していない」

ステーキ宮を運営するアトムは、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、今回話題となったレシピについて、すでに「把握していた」と回答した。

「宮のたれ」の使用原材料は、当初より同社ホームページで公開されているが、提供している商品は子会社および関連工場で製造しているため、「店舗勤務の社員が配分の割合であったり、どのように熟成させているかを知ることはできず、仮に何らかの手立てで知りえたとしても、自宅で再現するのは困難」だという。

公開されているレシピについては、「原材料を自分なりに色々配分などを調整されてアップしていると思われるため、弊社としては『営業秘密』とは考えていない。『元ステーキ宮社員』が本当であるか否かに関わらず、『宮のたれ』を愛して下さって再現したいとまで思っていただけるのはありがたい」として、現時点では問題視していないという。

●レシピが法的に保護されるケースはある

「宮のタレ(元ステーキ宮社員のレシピ)」そのものは問題なさそうだが、一般に、レシピは法的に保護されることがある。

佐藤孝丞弁護士によると、一般に、レシピは著作物に該当せず、著作権法による保護は難しいとされるが、不正競争防止法の「営業秘密」(同法2条6項)や特許法などによる保護はあり得るという。

特許の一例として、「燻製枝豆の調味料の製造方法」(特許第6842781号)がある。

「レシピを単に再現する行為自体は、完成度を問わず、問題ありません。しかし、不正競争防止法や労働契約などにより法的に保護されるレシピについては、これを業務等で取得した者が他者へ漏示する行為やウェブ上で公開する行為などが違法となるおそれがあります」(佐藤弁護士)

どのような場合に、再現レシピを漏らしたり、公開したりする行為が法的に問題となるのだろうか。

「『秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの』に該当する必要があります。

この判断は、たとえば、資料に『マル秘』などの文字を付していたか否かなど、客観的な事情が考慮されますので、秘密を保有している側がその主観で営業秘密だと思っているだけでは該当しません。

また、『不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で』営業秘密を使用・開示することが要件となっています(同法2条1項7号)。

これらの事実の立証責任も秘密を保有している側が負います。

営業秘密の侵害が認められると、権利者は、侵害者による使用・開示行為につき差止め(同法3条1項)、損害賠償(同法4条)に加え、侵害行為を組成した物の廃棄または侵害行為に供した設備の除却(同法3条2項)、営業上の信用を害された場合の信用回復の措置(同法14条)を求める余地があります」(佐藤弁護士)

このほか、会社との労働契約書や就業規則などに基づいて、社員ないし元社員が秘密保持義務を負っている場合にも法的責任を追及される可能性があるそうだ。

「もっとも、何が保護の対象となるのかが就業規則などの文言上明らかでない場合は、保護の対象外と判断されることもあります。

これらのいずれにも該当しない場合、一般不法行為(民法709条)による損害賠償請求の余地もあり得ます。しかし、不正競争防止法の趣旨から、同法による規制の対象とならない行為については、一般不法行為の成立は限定的とされています」(佐藤弁護士)

●簡単に「営業秘密」と認められるとも限らない

佐藤弁護士は、不正競争防止法上の営業秘密について、参考例として、「レシピに関係する裁判例(東京地裁平成14年10月1日判決)」を挙げた。

この裁判は、クレープ販売店のフランチャイズチェーンを主宰する会社(原告)が、同社元従業員の設立した会社(被告)に対し、原告の営業秘密である「クレープミックス液の材料および配合比率」を被告が使用しているとして、損害賠償を求めた事案だ。

「裁判所は、(1)クレープミックス液の主たる材料として、ミックス粉、卵、牛乳ないし水(あるいはその両方)を用いることは公知であると認められること、(2)クレープの品質を有意に向上させることの個別の立証がされていないことなどを理由に有用性を否定しました。

また、原告は、(a)市販されている料理本やクレープミックス粉の袋の説明書の各記載を根拠に、粉に対する水分(牛乳及び水)の量が原告配合と被告配合のみである点、(b)牛乳と水を1対1の割合で配合しており、この特徴を有するのは原告配合と被告配合の他にはない点、および(c)調味料としてリキュールを入れる点も同様である点、を強調してレシピの同一性を主張しましたが、裁判所は、有用性がないことを理由に、同一性を否定しました。

さらに、裁判所は、仮に、原告配合と被告配合が同一の内容のものであると評価できるとしても、原告が営業秘密であると主張する配合の内容は、既に競業他社及びその参加のフランチャイジーに明らかとなっており、また、原告の管理の及ばない状態となっていたのであるから、いわゆる『非公知性』および『秘密管理性』の要件を喪失したと判示しました」(佐藤弁護士)

裁判所の判断はケース・バイ・ケースだが、「秘伝のレシピ」が営業秘密として法的な保護を受けるためには、必ずしも低いとはいえない立証のハードルを超える必要がありそうだ。

取材協力弁護士

佐藤 孝丞弁護士
都内を中心に、企業法務一般、特に著作権・商標権・模倣品対応等の知的財産案件に注力。特許庁審判部にて勤務経験があり、弁理士としても活動中。一方で、相続等の様々な案件を取り扱う。弁護士知財ネット会員。
事務所URL:https://sklaw.jp/

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