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コロナ禍のひきこもり、支援困難で孤立 「家族が在宅で気まずい」訴える声も 調査結果を公表
会見の様子(4月19日、東京・霞が関、弁護士ドットコムニュース)

コロナ禍のひきこもり、支援困難で孤立 「家族が在宅で気まずい」訴える声も 調査結果を公表

感染拡大の影響で、また引きこもりに戻ってしまったーー。

コロナ禍における「ひきこもり」の状況について、関係団体が4月19日、調査結果を報告した。

コロナによって、本人・家族が孤立したり、ひきこもり支援に遅延・停滞が起きるなど影響があるという。

家族が在宅勤務に切り替わったことにより、居心地のわるさを感じる当事者がいる一方で、リモートワークで仕事を得る者もいる。いっそう必要とされるのは、家族も本人も孤立させない仕組みだ。

●定期的な面談や訪問支援ができなくなった

今回の調査(「ひきこもりの家族会に関する実態調査報告書」)は、特定非営利活動法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」が実施した。

665の行政機関、22カ所の家族会運営者、48人のひきこもり経験者、252人の当事者家族を対象として、主に昨年12月〜今年2月にかけて、おこなった。

ひきこもり地域支援センター、生活困窮者自立相談支援センターなど対応機関の90.7%が、現在もひきこもり相談を実施している。地域支援センターでは、9割以上で家族会が設置され、連携がとれていた。

コロナの影響によって、「定期的な面談、訪問支援ができなくなり、順調だった相談者がひきこもり状態になってしまった」(地域支援センター)、「会場の変更・閉鎖」「自粛によって参加者の半減」(家族会)などの報告がなされた。

●ひきこもり家族と支援機関とのかかわりが減少

続いて、当事者の家族が回答した。コロナによって、支援機関とのつながりが薄れているとの声があった。

家族回答者と、当事者の関係は、母親が76.6%で父親が21.0%で、当事者の性別は、男性が70.2%、女性が29.0%だった(残りは不明やその他)。

当事者の平均年齢は34.4歳(最年少が16歳。最年長が60歳)。

支援・医療機関の利用状況は、84.1%(昨年度は86.2%)が利用していると答えた。一方、利用を中断したのは43.3%(昨年度は37.4%)だった。

家族会への参加状況は、「継続している」が76.2%(昨年度は84.1%)。「中断している」としたのは12.3%(昨年度は9.0%)。

●家族が在宅勤務をはじめて、居場所を追いやられる

コロナによって、家族は精神的な負担を当事者に感じている。

「父親と兄がリモートワークになった際は、やはり本人にとって居心地があまりよくなく、自分だけ就労していない負い目から部屋に引きこもることが多くなった」 「2つ上の姉が仕事が減り、家にいる時間が長いので、いらいらしているようだ」

また、本人からも居心地のわるさが報告されている。

「父親(高学歴・北大卒)が家でリモートワークになり、いっそう自分と顔を合わせることになって居心地がわるい」 「外出を控えることが多くなり体調に少なからず影響が出ていて、意欲も失っている」

●オンライン支援が必要だ

調査を手がけた境泉洋教授(宮崎大学)によれば、家族の平均年齢は65.1歳で高止まりしている。コロナ不安から外出を控えた家族も多いようだと話す。

「コロナで重症化しやすい高年齢層が警戒したようだ。世帯は完全に孤立してしまうので、親が高齢になったときにつながりを絶たないことが大きな課題」

支援側、家族側の双方から、オンラインで支援を受ける仕組みの充実が求められた。

境教授(右) 境教授(右)

●コロナがひきこもり本人に自信をつけさせた

ただ、深刻な事態ばかりではない。

「パーソナルスペースを侵害されず、コロナのおかげで生きやすい」など本人からの回答や、「ひきこもりの娘が、在宅ワーク支援をしている会社に出会い、リモートでお仕事の支援やつながりも作ってもらい自信につながったようだ」と喜ぶ家族も。

「日本全体が総ひきこもりになることで、当事者にとってある意味、ひきこもることが責められなくなり、本人にも家族にも良い影響があった」(境)

会の代表を務める伊藤正俊さんは、人はこれまで、人と群れることで孤独感を解消してきたと話す。

「物質的な豊かさがあると、他人の介入をまたなくても、(1人で)できてしまうような万能感がこの社会を覆っているのではないか。多様な生き方を認め合えば認め合うほど、つながっていくのが難しい社会ではないか」

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