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他人の敷地に勝手に入った「犬好きおばさん」を犬がガブリ!治療費は飼い主が払うの?
写真はイメージです(tasaka / PIXTA)

他人の敷地に勝手に入った「犬好きおばさん」を犬がガブリ!治療費は飼い主が払うの?

「実家の敷地内に勝手に入ってきた近所のおばさんが、うちの飼い犬に噛まれて治療費を請求してきました」。大学生のFさんは、高校生の時に住んでいた実家で起きたトラブルを振り返ります。

Fさんは実家の敷地内にある駐車場で、犬をリードで繋いで日向ぼっこをさせていました。すると、家のチャイムが鳴り、おばさんが「お宅の家のワンちゃんに噛まれました。病院へ行くので治療費を払ってください」と要求してきました。

物腰は柔らかかったそうなのですが、おばさんの手から血が出ていたこともあり、Fさんはビックリして5000円を払いました。

おばさんは動物好き。犬にパンをあげようと駐車場に無断で入ってきて、犬と戯れていたところ、噛まれてしまったそうです。Fさんは「勝手に敷地に入ってくることがなければ、犬に噛まれることはありませんでした。なんだか理不尽です」と納得のいかない様子です。

今回のようなケースの場合、噛まれた人に飼い主が治療費を支払う義務はあるのでしょうか。足立敬太弁護士に聞きました。

●治療費を払う必要のある場合・ない場合とは?

ーー飼い犬が他人にケガをさせた場合、治療費は誰が払うのでしょうか。

動物が他人に損害を与えた場合については、民法718条に規定があります。自分の占有する動物が他人に損害を与えた場合、その損害を賠償しなければならないとされていて、原則として動物の占有者、つまり「飼い主」や管理者が賠償責任を負います。

ただし、常に責任を負うわけではありません。「動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたとき」は免責される(同条1項ただし書き)とあり、他人に損害を与えないように注意をして管理していた場合には責任を負いません。

犬は身近な動物で、しかも噛む危険がある動物なので、犬に噛まれたケースで、この条文の適用の可否が争われた事件は多数あります。ただ、裁判例の基本的な考え方として、容易には免責が認められない傾向にあります。たとえば、放し飼いで免責が認められることはまずありません。

ーー今回のケースでは、犬を放し飼いではなくリードに繋いでいたそうです。リードに繋いでいれば問題ないのでしょうか。

リードに繋げば十分かというと、それだけでは不十分です。リードの長さやリードを使用した状況・場所の要素も考慮が必要です。

そのうえで、今回のケースは、自宅の敷地内に柴犬が留まるようにリードに繋げていたにもかかわらず、被害者がわざわざ敷地内に入って近寄り柴犬に噛まれたという事案です。

今回のように被害者が近寄った事案、つまり、自ら危険を招き入れたケースでは、免責が認められた裁判例が複数あります。今回も、もし裁判になれば、Fさんは免責され、治療費を払う義務はないと判断される可能性が十分あったと思われます。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

足立 敬太
足立 敬太(あだち けいた)弁護士 あい弁護士法人富良野・凛と法律事務所 旭川OFFICE
北海道・富良野在住。投資被害・消費者事件や農家・農作物関係の事件を中心に複数の分野を取り扱う。「常に相談者・依頼者様の視点に立ち、分かりやすい説明を心がけています」

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