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飛行機内の「マスク拒否」でトラブル続出 降機の理由「安全阻害行為」とは?
ピーチ・アビエーションの旅客機(efksu / PIXTA)

飛行機内の「マスク拒否」でトラブル続出 降機の理由「安全阻害行為」とは?

ピーチ・アビエーションの便でマスクの着用を拒否し大声で騒いだ乗客が臨時着陸して降ろされるトラブルが9月7日に発生したばかりだが、今度は別の航空会社で離陸前に降ろされるトラブルが発生した。

報道によると、トラブルは9月12日、北海道の奥尻空港から函館空港に向かう北海道エアシステム(HAC)の機内で発生。離陸前、マスクをしていない男性に対し、客室乗務員が着用を求めたところ、出発を促す言動を繰り返すなど応じなかった。理由の問いかけにも回答がなかったという。

このため、機長は、航空法上の「安全阻害行為」に当たると判断し、男性に降りるよう命じた。男性は降機に応じたが、出発は約30分遅れたという。

7日のトラブルでも安全阻害行為を理由に飛行機を降ろされているが、「安全阻害行為」とはどのようなものなのか。

●「安全阻害行為等」については機長が判断

航空法は、以下の行為を「安全阻害行為等」と定義している(73条の3)。

(1)航空機の安全を害する行為
(2)航空機内にいる他人の身体・財産に危害を及ぼす行為
(3)航空機内の秩序を乱す行為
(4)航空機内の規律に違反する行為

その上で、機長は、機内で安全阻害行為等をし、又はしようとしていると信ずるに足りる相当な理由がある場合、必要な限度で、拘束などの措置をとったり、降機させたりできるとされている(73条の4第1項)。

つまり、安全阻害行為等が実際に行われている場合のほか、行われる可能性が高いという段階でも、相当な理由があれば、機長の判断で未然に防ぐために一定の措置をとれるということだ。

●マスク着用拒否だけが理由ではない

9月に続けて発生した両トラブルとも、コロナ禍との関係で、マスクの着用拒否が注目を集めているが、拒否したこと自体がただちに「安全阻害行為等」に該当するわけではない。

2020年5月に策定された「航空分野における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」では、機内の座席での対策について、「旅客に会話をなるべく控えることを呼びかけるとともに、マスクの着用を要請すること(幼児及び着用が難しい理由のある旅客を除く)」と定めている。

マスク着用はあくまで要請であり、義務ではない。実際に、7日のピーチ便では、男性はマスクを着けないまま、他の乗客が別の席に移動する形で対応して離陸している。

マスク着用拒否自体がただちに「安全阻害行為等」に当たると判断したわけではないことを示しているといえるだろう。

ピーチ便では「侮辱罪だ」「やれるものならやってみろ」などの威嚇的な言動があったとされており、これらの言動なども含め、機長が「安全阻害行為等」に当たると判断し、臨時着陸して降機を命じたとみられる。

HAC便のトラブルについては、報道によれば、客室乗務員などとのやり取りから安全が確認できなかったとされており、最終的にはピーチ便と同じような判断がされたものとみられる。

●すべては安全な航行のために

なお、機長は、「安全阻害行為等」のうち、以下(1)〜(8)の行為をした者に対して、禁止命令を出せる(航空法73条の4第5項、同法施行規則164条の16・17)。命令に違反した場合、50万円以下の罰金の対象になる(同法150条5号の4)。

(1)正当な理由なく乗降口の扉などを操作
(2)トイレ内での喫煙(電子たばこや加熱式たばこ等を含む)
(3)乗務員の業務妨害
(4)携帯電話などの電子機器の使用
(5)座席ベルトの未装着
(6)離陸時に座席の背やテーブルなどを元に戻さないこと
(7)脱出の妨げとなる場所への手荷物放置
(8)正当な理由なく非常用機器を使用

電子たばこや加熱式たばこ等の喫煙禁止は、2020年7月1日にガイドライン改正であらためて明確化された点だ。

機長には機内における強い権限があるが、これらはすべて安全な航行に全責任を負っているがゆえに認められているものだ。

旅客機の航空事故は、ひとたび発生すると大勢の死傷者が出るなど悲劇的な事態となり得る。利用者一人一人が「安全阻害行為等」と判断されるようなことをしないよう、心がけておくべきだろう。

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