新型コロナウイルスの影響で、小・中学生は例年よりも短い夏休みとなりました。これにより、夏休みの宿題も少なくした学校もありますが、それでも夏期講習や習い事などで忙しい子どもたちには負担となっているようです。
8月18日に放送された朝の情報番組「グッとラック!」(TBS系)では、子どもたちの宿題を代わりにおこなう「宿題代行」が特集され、ネットでも話題となりました。
●ネットでは賛否両論
特集で紹介されたある宿題代行業者は、小学生の場合、国語・算数・理科・社会は一問につき100円、長文読解は180円、ポスターは作品一枚1万5千円、読書感想文や作文は400字につき3000円と細かく料金が決まっており、感想文を書くときには依頼者の子どもの筆跡を似せるといいます。
さらに、宿題代行業者に依頼した親も登場。「娘は歌を習っていて夏休みもレッスンがあって忙しい」と話し、習い事に専念させるために依頼したことがうかがえました。
番組MCをつとめる落語家の立川志らくさんは、自身のツイッターで「宿題代行は子供の為じゃなく金儲けだ」と批判。
ツイッターでは、「たちが悪い仕事」「将来的に子供のためになるのか」と依頼や業者を疑問視する声もあれば、「学校教育に問題がある」「全部じゃなければ全然あり」と理解を示す人もいました。
「宿題代行」は近年問題になっており、文部科学省は2018年にもフリマアプリやサービスをもつ3社と「宿題代行」の出品を禁止することで合意しています。
果たして、本来子どもたちが自分でおこなうべき宿題を代行するサービスに法的問題はないのでしょうか。大久保誠弁護士に聞きました。
●刑事民事ともに問題にならない
ーーお金をとって宿題代行する業者に法的問題はないのでしょうか
詐欺罪(刑法246条)は、人を欺いて財物を交付させたり、財産上不法の利益を得たりした場合に成立するものです。
宿題代行サービスは、これを頼むのは子どもの親であり、親は代行であることが分かって料金を支払っているので、「人を欺く」ことにはならず、詐欺罪は成立しません。
私文書偽造罪(刑法159条1項)は、行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した場合に成立するものですが、読書感想文や作文、ポスターは権利、義務に関する文書や図画とは言えません。
私立大学の入試答案について、これを採点した結果が入学に関する合否判定資料として、社会生活上の重要事項を証明するため、事実証明に関する文書とされた最高裁判決がありますが、読書感想文や作文、ポスターをもって入学に関する合否判定資料と言えるかかなり疑問です。したがって、私文書偽造罪も成立しないと考えられます。
偽計業務妨害罪(刑法233条)も、宿題代行により学校業務が妨害されるとは言い難いでしょうから成立しないと考えられます。もし成立するとすると罪に問われるのは代行業者ではなくて提出をさせた親となるでしょう。
民事上も、宿題代行を頼む親との関係では詐欺に当たることはないですから、取り消しによる料金の返還請求は認められません。学校との関係でも、業務妨害罪が成立しない以上は、民事上の問題は生じないでしょう。