国際人権規約(条約)に反して、出入国在留管理庁の施設に長期収容をされて、精神的苦痛を受けたとして、難民申請中の外国人男性2人が1月13日、国を相手取り、計約3000万円の損害賠償をもとめる訴訟を東京地裁に起こした。
原告は、イラン国籍のサファリさんとトルコ国籍のデニズさん。この日の提訴後、原告とその弁護団が東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。サファリさんは「日本の裁判を信じて、正しい判断をしていただいて、俺たちもそうだけど、ほかの外国人の人権も守ってほしい」と述べた。
デニズさんは「入管中にいるとき、入管のスタッフから『ルール守って』といつも言われる。なんで国連のルールを守らないの。なんで国連(の条約に)サインしたですか。国連の言葉を無視してるですか。(わたしたちを)いじめて、精神的暴行やってる人もいる。それはルール違反です」と語った。
●原告2人は長期収容を繰り返されてきた
訴状などによると、サファリさんは1991年、政治的な理由による迫害を逃れるために日本にやってきた。オーバーステイ(超過滞在)になったのち、2010年から難民申請をおこなっているが、現在まで認められていない。
サファリさんは2016年6月から2020年4月まで計1357日間、収容と再収容を繰り返されたことで、心身ともに健康状態に著しい不調をきたしており、2019年6月には絶食までに追い詰められ、同8月には、抑うつ状態という診断も受けているという。
クルド人であるデニズさんは2007年に来日したが、当時は、家族や友人といった知人がおらず、適法に在留し続けるために必要な手続きを知らなかったため、難民申請や在留資格の更新をおこなうことができないまま長期滞在となった。
デニズさんは2009年12月から2010年8月および、2016年から2020年4月(計1384日間)も収容・再収容された。長期収容による精神的苦痛に耐えられず、これまで複数回の自殺未遂を起こしている。心因反応やよくうつ、PTSD疑い、胃炎の診断を受けているという。
●条約に基づいて損害賠償を求めている
サファリさんとデニズさんの長期収容をめぐっては、通報を受けた国連の恣意的拘禁作業部会が2020年、国際人権規約(自由権規約)に反するという意見を採択した。
原告側は、入管による長収容・再収容が、司法審査もなく、必要性・合理性などもないため、自由権規約で禁じられた「恣意的拘禁」にあたると主張。さらに自由権規約に定められた「賠償を受ける権利」に基づいて、損害賠償をもとめている。
原告側の弁護団の1人、浦城知子弁護士は会見で「国連の作業部会に続いて、原告2人に対する入管収容が自由権規約に違反していたことを日本の裁判所においても明らかにしたい」と話していた。