受験の季節。受験生やその家族にとっては試練のときだが、見事に目標を達成することができれば、合格の喜びを分かち合うことができる。大学進学を決めた高校生の中には、祖父母などから合格祝いをもらう受験生も多いのではないか。
合格祝いにもいろいろあるが、学費の足しにしてほしいと、ずばり「お金」が贈られる場合もあるだろう。これは、法的にいえば、金銭の「贈与」にあたる。
贈与といえば、「贈与税」という税金がかかることが知られているが、合格祝いの場合はどうなのだろう。高校生がもらった合格祝いにも贈与税がかかり、未成年でも納税しなければいけないのだろうか。足立仁税理士に聞いた。
●年間110万円以下なら「贈与税」はかからない
「未成年でも、贈与税の申告・納税は必要です」
このように足立税理士は述べる。だが、これは原則論。贈与の金額が小さければ、課税されないのだという。
「社会通念上、相当と認められる程度の贈与は、非課税とする通達があります。つまり、合格祝いが10万円ぐらいの常識的な金額であれば、非課税です」
では、100万円の合格祝いをもらった場合は、どうだろう。
「贈与税には、『基礎控除』という非課税となる金額が設定されていて、年間110万円です。このため、受け取った金額が年間で110万円以下の場合、贈与税はかかりません。したがって、100万円の合格祝いを1回もらっただけなら申告は不要です」
ただし、基礎控除は「贈与を受けた側の一年間の合計金額」で判定されるというから、注意が必要だ。
「たとえば、父方の祖父母と母方の祖父母の両方から100万円ずつ合格祝いをもらうと、合計200万円となります。この場合、年間110万円の基礎控除を越えてしまうので、申告が必要になります」
●「教育費」としての贈与ならば非課税にできる
だが、「合格祝い」ではなく、「教育費の贈与」だと、話は変わってくるという。
「実は、税法では、扶養義務者による『教育費の贈与』は非課税と規定されています。
たとえば、私大医学部たと初年度の学費が1000万円を超えることもありますが、祖父母がその金額を孫に贈与した場合は、金額が1000万円以上でも申告は不要で、贈与税はかからないのです」
このように足立税理士は説明する。
「ただし、『教育費の贈与』とするためには、その年に必要な金額のみを贈与して、余分な残りを出さないようにする必要があります。このため、大学4年分の授業料をまとめて贈与することはできません」
つまり、大きな金額の教育費を孫に贈る場合は、その年に必要な分だけ渡すほうがいいということだろう。ただ、これにも例外はあるという。
「教育費をまとめて贈与したい人のために、『祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度』が、2013年に導入されました。この制度を活用すれば、1500万円までの教育費を非課税で贈与することができます」
大学に合格した受験生への「贈与金」といっても、その名目や金額によって、税金がかかるかどうかが変わってくるようだ。大きな金額を贈ってもらえそうな受験生は、ちょっと頭に入れておくといいかもしれない。
【取材協力税理士】
足立仁 (あだち・じん)公認会計士・税理士
東京大学経済学部卒業。税理士法人ファザーズ代表社員として、多くの資産家・企業経営者の顧問を務める。2013年より日本公認会計士協会東京会幹事。
事務所名 :税理士法人ファザーズ
事務所URL:http://souzokuzei.or.jp/