香川県高松市の男性郵便局員がオートバイで配達している途中、水路に転落し、郵便物約600通が流された。1月中旬の出来事だ。このうち約100通は回収できたが、残り約500通は行方不明だという。
日本郵便四国支社の発表によると、この局員は配達先の駐車場でバランスを崩し、水路に転落した。行方不明になった郵便物や荷物については「捜索、回収を行い、回収できたものについては、差出人様及び受取人様へのご説明等を行っている」と説明している。
ただ、行方不明になった500通の中には、重要な手紙も含まれていたかもしれない。ネットでは「重要書類もあったんだろうなぁ」「紛失した手紙の中に、運命を変えるラブレターがあったかも」などの声がでている。今回のように郵便物の紛失によって何らかの損害が生じた場合、日本郵便は賠償責任を負うのだろうか。濵門俊也弁護士に聞いた。
●「日本郵便に賠償責任はない」
「郵便法では、損害賠償の対象となる郵便物の種類や範囲が細かく決められています。それによると、現金書留や簡易書留は、損害賠償の対象になります。しかし今回のように、配達中に手紙やハガキを紛失して何らかの損害を生じさせても、日本郵便に賠償の責任はありません」
濵門弁護士はこのように説明する。なぜ手紙やハガキを紛失しても、賠償責任がないのだろうか。
「仮に、一般企業と同じような損害賠償責任を日本郵便に負わせると、リスクに備えるため、料金を引き上げたり、配達局員がもっと慎重に配達業務をせざるを得なくなります。
郵便事業は『なるべく安い料金で、あまねく、公平に提供すること』(郵便法第1条)を目的としています。もし、料金を値上げしたり、配達に時間がかかるようになると、その目的を果たせなくなるおそれがあります。
そのため、民営化された現在も、郵便事業は、損害賠償を一部免責されているわけです」
●配達局員個人には請求できない?
では、日本郵便への損害賠償請求ができないとしても、損害を発生させた配達局員個人に対して、賠償を請求できないのだろうか?
「この点については、民営化によって、個人を訴えることが理論的には可能となりました。
しかし、配達局員個人の賠償責任を認めると、配達局員という職業のリスクが高まって、結局は、郵便法第1条の趣旨に反することになります。
配達局員個人に対し損害賠償請求できるかどうかは、解釈が分かれるでしょう」
濵門弁護士はこのように述べていた。絶対に紛失したくない書類や手紙は、普通郵便で送らずに直接手渡したり、損害賠償の対象となっている簡易書留などを利用するのがよさそうだ。