人気アニメ「ワンピース」のキャラクターのシールを貼付けた米ドル紙幣をインターネットオークションで販売したとして、岡山県警は10月下旬、名古屋市内に住む番組制作会社の男性社員を著作権法違反の疑いで逮捕した。
報道によると、男性は「ワンピース」の映画から主要キャラクターの画像を取り出し、シールを作って1ドル紙幣の肖像部分に貼り、3月上旬〜8月中旬にかけて4回にわたって販売した疑いがもたれている。落札価格は1枚1500円〜1600円で、男性は容疑を認めているという。
今回男性は「著作権法違反」の罪に問われたわけだが、具体的にどういう部分が法律的に問題だったのだろうか。たとえば、市販されているシールを貼った紙幣を販売しても、著作権法違反になってしまうのだろうか。唐津真美弁護士に聞いた。
●何が法律的に問題だったのか?
「報道によれば、このシールは映画から取り出した画像で作ったようです。そうなると、まずは映画の著作権侵害が問題になります」
唐津弁護士はこのように切り出した。
「映画の著作権侵害というと、映画作品全体を録音・録画したり、ダビングしたりといった、複製行為が頭に浮かぶかもしれません。
しかし、著作権侵害となる『複製』はそれだけではありません。今回のように映画の一場面を切り出してシールを作ることも『複製』にあたるのです」
●「原作の権利」も侵害する
さらに、アニメ映画の一場面を取り出してシールにすることは、「原作漫画の著作権侵害」ともなりうるという。どうしてだろうか。
「原作漫画に映画とまったく同じ場面の絵があるとは限らないので、原作漫画の著作権侵害にはあたらないように思えるかもしれません。
しかし判例では、漫画のキャラクターの無断利用について、原作の特定の場面でなくても、一目で複製と分かる絵を描いた場合は、原作の絵の複製権侵害とみなしています。
映画の一場面を取り出して、そこに映ったキャラクターでシールを作った場合、映画だけではなく原作漫画の著作権も侵害したとみなされる可能性が高いでしょう」
●市販のシールをお札に貼ったら違法?
ということは、たとえば、市販されているキャラクターのシールをお札に貼って販売したのなら大丈夫だったのだろうか?
「この場合、著作物の複製などは行われていないため、著作権侵害にはあたりません。
ただ、キャラクターによっては商標として登録されている場合があります。さらに、登録商標でなくても、シールが貼られていることで購入者が正規のオフィシャルグッズなどと混同する可能性もあります。
そのような場合、使用態様によっては商標権侵害や不正競争防止法違反が問題になるので、注意が必要です」
唐津弁護士は、このように警鐘を鳴らしていた。