中国・河北省にある「河北美術学院」の建物が、世界的にヒットした映画『ハリー・ポッター』の魔法学校によく似ているとして、物議を醸している。多数の海外メディアが大きく報じた写真をみると、西洋の古城のような外観は、どこか映画を思い起こさせる。ただ、細部は映画と違いがあるようだ。
映画の魔法学校は、ミニチュアやコンピュータ・グラフィックス(CG)などを駆使して描かれており、完全に再現するのは簡単ではないのかもしれない。もし、仮にCGそっくりの建物を作ったりしたら、法的に問題となるのだろうか。著作権にくわしい中谷寛也弁護士に聞いた。
●映画の一部も「著作物」になる
「映画は、連続する画像と音声が一体となった著作物です。ですから、連続する画像の瞬間の一つずつ、さらに流れる音楽や役者のセリフ一つずつにも、基本的に著作権が発生します。原則としては、映画の製作者がその著作権を持つことになります」
では、魔法学校のCGも著作物になる?
「はい。魔法学校のCGも映画の一部ですから、著作権が発生することになります」
それでは、それをもとに現実の建物を作ったら、著作権法上、問題となるのだろうか?
「映画に登場するキャラクターや、その映画に特有のデザインがされた小物などを取り出して、実物として作成することを、著作権法上では『変形』といいます。キャラクターのぬいぐるみをはじめとした、様々なグッズがわかりやすい例ですね。
この『変形』は、著作権法27条に定められた『翻案権』の一部で、著作者(ここでは映画の製作者)が独占的に権利を持つことになります」
すると、映画そっくりの建物を再現した場合は?
「そうですね。映画『ハリー・ポッター』に出てくる美術学校を、現実にそのまま再現した建築物を作ることは、映画の一部から建築物に『変形』させることになります。そのため、無断で行えば、映画の製作者の保有する著作権(翻案権)を侵害したということになると思います」
中谷弁護士はこのように述べていた。