秋田市の中学校で同僚女性のスカート内を盗撮したとして、捜査されていた男性について、秋田県警は県迷惑防止条例違反の疑いでの立件を見送る方針を固めた。共同通信が5月16日、報じた。
共同通信によると、男性は教室で女性職員2人を小型カメラで盗撮していたという。秋田県の迷惑防止条例では、公共の場所または公共の乗物において、衣服等で覆われている人の下着または身体を撮影することを規制しているが、校舎がこれに当てはめられないと判断されたそうだ。
学校内での盗撮は、罪に問われないのだろうか。奥村徹弁護士に聞いた。
●秋田県の条例、学校は「公共の場所」に該当しない
秋田県の迷惑防止条例はどのようなものですか。
「秋田県の盗撮に関する規定は『公衆に著しく迷惑をかける暴力的な不良行為等の防止に関する条例』の4条『卑わいな行為の禁止』で定められています。
4条1項については『何人も、正当な理由がないのに、公共の場所又は公共の乗物において、人の性的羞恥心を著しく害し、又は人に不安を覚えさせるような次に掲げる行為をしてはならない』として、『公共の場所において』という場所の限定があります。
これについて、秋田県は『不特定多数人が自由に利用することができる性質のものを指し、単に場所をいうのではなく、場所の公共性をいうのであって、営業時間以外の興行場、飲食店、デパートなどは、そのときにおいては公共の場所とは言えない』と解説しています」
では、学校内の盗撮は規制の対象外なのでしょうか。
「学校は、学園祭や運動会などで一般開放されている時を除けば 『不特定多数人が自由に利用することができる性質の場所』ではないので、『公共の場所』には該当しないことになります」
●都道府県によって対象範囲はバラバラ
他の都道府県では、どのように定められていますか。
「10年以上前に、奈良県で救急車内での盗撮行為が問題になって以来、各県で条例の対象範囲を『公共の場所』よりも広げる改正が行われています。
京都府、宮崎県など『公共の場所、公共の乗物その他の公衆の目に触れるような場所において』などと定めている自治体がほとんどですが、沖縄県や今回の秋田県のように未対応の自治体もあります」
●「盗撮被害からの保護には県境は関係ない」
同じ盗撮行為でも、全国でばらつきがあるんですね。
「盗撮行為については、刑法に窃視罪(軽犯罪法1条23号)があることと、迷惑条例の保護法益が社会的法益であることから私的空間での行為には立ち入れません。そのため、各自治体の対応にばらつきがあるのだと思います。
盗撮被害からの保護には県境は関係ないし、ばらつきがあるのも説明しがたいので、立法による全国一律での規制を検討すべきだと思います」