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2017年03月25日 08時06分

ヌンチャク所持で逆転無罪判決、武器や凶器を所持できる「正当な理由」とは?

ヌンチャク所持で逆転無罪判決、武器や凶器を所持できる「正当な理由」とは?
画像はイメージです

岡山県備前市で2015年、ヌンチャクを車内に隠し持っていたとして軽犯罪法違反(凶器の隠匿携帯)の罪に問われ、一審で科料9900円の判決を受けた整体師の男性に対して、広島高裁岡山支部は3月8日、逆転無罪判決を言い渡した。

報道によると、男性は中高生の頃に、アクションスターのブルース・リーに影響を受けてヌンチャクを買い、練習を始めた。2015年11月に備前市内のコンビニエンスストアの駐車場で警察官から職務質問を受けた際、乗用車にヌンチャク3組を積んでいたとして、玉島簡裁で有罪判決を受けたという。

これに対し、大泉一夫裁判長は判決理由で「現代ではヌンチャクは武道や趣味として適法な目的で使用されるのが一般的だ」と指摘。「趣味として仕事の合間に練習するためという携帯の目的には相応の合理性があり、正当な理由がないとした一審判決は誤りだ」とした。

ネット上では「ヌンチャクがダメって初めて聞いた」など、一審で有罪判決が下ったことへの驚きの声も上がっていた。一般論として、ヌンチャクなどの武器や凶器を持っていることが軽犯罪法違反となるのはどのような場合なのか。中村憲昭弁護士に聞いた。

●実際に人を傷つけるためには相当の熟練が必要

正当な目的があれば、武器や凶器を持っていても軽犯罪法違反にはなりません。軽犯罪法1条3号が、処罰の対象を「正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者」と規定しているからです。

この法律で規定する「人の体に重大な害を加えるのに使用されるような器具」には、刃の付いていない携帯ナイフ型の装飾品も含まれます。ヌンチャクはそもそも武具ですから、社会通念上、軽犯罪法に該当する危険な「器具」に該当しそうです。問題は「正当な理由」の有無です。

本件のように、演武会での模範演技や練習目的であれば、社会通念上「正当な目的」ありといえるでしょう。逆に、たとえばケンカに使用する目的でヌンチャクを持っていれば軽犯罪法違反を問われる可能性があります。

もっとも、ヌンチャクは映画では武器として使われていましたが、実際に人を傷つけるためには相当の熟練が必要です。今回の場合も、所持者から「練習目的だ」と聞いて、それを疑うだけの根拠があったのか、甚だ疑問です。

●軽犯罪法の拡大解釈で「ニート」も処罰対象に!?

さらに重大な問題は、軽犯罪法という網羅的な刑罰法規により、警察官からささいなことで検挙される可能性があるということです。

軽犯罪法は、「こじき行為」も処罰の対象としています。「生計の途がないのに、働く能力がありながら職業に就く意思を有せず、且つ、一定の住居を持たない者で諸方をうろついたもの」も処罰の対象ですので、いわゆるニートが今後処罰される可能性もあります。

「公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者」や「公私の儀式に対して悪戯などでこれを妨害した者」も処罰の対象ですので、デモ行為などが処罰の対象となる可能性もあります。

「そんなバカな」と思う人がいるかもしれませんが、今検挙されないからといって、今後も処罰されない保障はありません。今回のヌンチャク事件を知って「バカな」と思った人が多いと思いますが、実際にあった出来事ですし、過去には軽犯罪法で政治的表現のビラ配布を検挙した例もあります。

3月21日、共謀罪法案が閣議決定され、国会に提出されることとなりました。過去3回廃案とされたことからもわかるとおり、この法律は軽犯罪法以上に網羅的で、解釈次第で処罰範囲が拡大される危険性の高いものです。

今回の事件でも分かるとおり、権力は暴走しがちです。本件は、そのことを意識させる事件だったと思います。

(弁護士ドットコムニュース)

取材協力弁護士

中村 憲昭弁護士
離婚・相続、交通事故など個人事件と、組織が万全でない中小企業を対象に活動する弁護士。裁判員裁判をはじめ刑事事件も多数。その他医療訴訟や建築紛争など専門的知識を要する分野も積極的に扱う。

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