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頼まれ断れず…症状偽って入手した「精神安定剤」を他人に譲渡、法的な規制は?
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頼まれ断れず…症状偽って入手した「精神安定剤」を他人に譲渡、法的な規制は?

家族に譲渡するために、嘘をついて精神安定剤を処方してもらうことは違法? 弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、ある女性が相談を寄せました。

相談者には、精神安定剤を20年以上服用している家族がおり、ある時、「医療機関を受診して同じ処方薬をもらってきてくれ」と頼まれたそうです。初めは断ったものの、「動悸や不眠で辛そうだったので、受診し、自分の症状と偽り、処方を受け、譲渡」するようになったといいます。

これまで数年間にわたり、3つの医療機関から処方された薬を家族に譲渡しています。家族に「譲渡を辞めたい、ちゃんと治療しよう」と話しても「ストレスから逃げられない状況では無理」と言われ、取り合ってもらえないそうです。

症状を偽って病院から精神安定剤を受け取り、その薬を家族に譲渡する行為は、法的にどのような問題があるのでしょうか。藤田昭平弁護士に聞きました。

●法的にはどのような問題がある?

精神安定剤とは不安を和らげる薬のことで、抗不安薬に相当する向精神薬の一種です。また、精神安定剤には、抗不安作用の強さと作用時間が異なる様々な種類があります。

向精神薬の譲渡については、麻薬及び向精神薬取締法によって規制されています。向精神薬を譲渡したり譲渡する目的で所持した場合、3年以下の懲役に処される可能性があります(同法66条の4第1項)。

規制対象となる向精神薬については、同法の別表3及びその委任を受けた政令にて定められています。同法の規制対象となっているのは、エチゾラム、アルプラゾラム、ロラゼパム、ブロマゼパムなど70を超える向精神薬です(「麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令」第3条参照)。

相談者の方が処方されている精神安定剤が、規制対象となっているようであれば、処罰の対象になり得るでしょう。

●「詐欺罪」で処罰される可能性も

また、相談者の方は、医師に対して偽りの症状を述べて、処方してもらっているとのことです。偽りの症状を述べて医師の処方した精神安定剤を受け取ると、医師に対する詐欺罪(刑法246条1項)として処罰される可能性もあります。

相談者の方には、向精神薬の譲渡が、なぜ法律で規制されているのか考えていただきたいと思います。向精神薬には副作用や依存性もあり、専門家である医師の指導の下に適切な量を服用しないと危険だからです。医師が処方する薬だから安全だと安易に考えるのではなく、何よりもご家族の健康のために、向精神薬を譲渡するべきではないでしょう。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

藤田 昭平
藤田 昭平(ふじた しょうへい)弁護士 弁護士法人中村国際刑事法律事務所
刑事事件を得意分野とし、日本の勾留件数の多さに疑問を持ち、勾留請求却下や勾留決定に対する準抗告認容を多数獲得している。裁判員裁判も経験しており、少年事件や犯罪被害者の代理人等刑事事件を広く手掛けている。

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