人気タレント、ローラさんの父親が「国際指名手配」され、大きな騒動となっている。
各社報道によると、警視庁は6月25日までに、ローラさんの父で、バングラデシュ国籍のジュリップ・エイエスエイ・アル容疑者の逮捕状を取った。容疑は2009年12月、知人のバングラデシュ人調理師(詐欺容疑で逮捕)と共謀し、調理師がバングラデシュで1カ月入院したというウソの診断書などを世田谷区役所に提出、海外療養費約87万円をだまし取った疑いがもたれている。ジュリップ容疑者はそのうち約40万円を受け取ったとみられている。
また、この調理師はジュリップ容疑者に話を持ちかけられたと供述しており、警視庁はジュリップ容疑者が詐欺グループの指南役で、グループ全体で1000万円以上をだまし取ったとみているという。ジュリップ容疑者は昨年8月にバングラデシュへ帰国後、日本に戻るのを拒否しているため、警視庁はインターポール(国際刑事警察機構・ICPO)を通じて国際指名手配した。
この「国際指名手配」という言葉に対し、ネット上では「ルパン三世みたいだ」といった感想もあるが、具体的にはどのようなもので、なぜ必要なのだろうか。刑事事件に強い中村勉弁護士に聞いた。
●海外にいる容疑者を逮捕できるのは、現地の捜査機関
「日本で起きた事件であっても、逃亡して外国にいる容疑者を、日本の警察が逮捕することはできません。国にはそれぞれ独自の『主権』があって、日本人がそれを勝手に侵害してはいけないからです。
つまり、ローラさんのお父さんを日本に連れ帰るため、日本の警察官がバングラデシュに出張し、逮捕することはできないのです」
――「国際指名手配」された容疑者はどうなる?
「『国際指名手配』は、インターポールに加盟している国の捜査機関に、協力してもらうための手続きです。容疑者を実際に逮捕できるのは現地の捜査機関ですから、その彼らが現地で探し出すことになります。
なお、国際指名手配にも実はいろいろな種類があります。たとえば、容疑者を他国に引き渡すことを前提として、その身柄を現地の捜査機関に拘束してもらうものを『逮捕手配』といいます。今回、ローラさんのお父さんに対して出されたのはこの逮捕手配(通称・赤手配)です。
他に、国際容疑者の所在・身元・犯罪経歴等に関する情報を求める『情報照会手配』(青手配)など、全部で6種類の国際手配があります」
――アニメ『ルパン三世』に出てくる銭形警部のように、国境を越えて活動する捜査官もいる?
「銭形警部は、インターポールの国際捜査官として、手錠片手に世界中どこでも飛び回るという設定です。しかし、本当のインターポールは、各加盟国の警察間の連絡・協議機関に過ぎません。独自に犯罪捜査を行っているわけではなく、銭形警部のような専属の捜査官もいません」
――今回のように『国際指名手配』がされたら、実際にはどんなやり取りが行われる?
「まず、日本の警察の要請を受けたインターポールの事務総局が、バングラデシュ警察に国際指名手配書を送付します。次にバングラデシュ警察が、同国の国内法に従って容疑者の国内手配を行います。
そして、逮捕に至った場合には、日本への引き渡し手続きを行います。容疑者の身柄の引渡しを受けた後は、通常の日本の国内法によって、刑事裁判にかけることになります」
――その国がインターポールに加盟していなければどうなる?
「この手配ができるのはインターポールの加盟国(現在190か国・地域)だけですので、個別の犯罪人引き渡し条約によることになります。今後、すべての国がインターポールに加盟するようになれば、犯罪人はどこに逃げても無駄ということになるでしょう」
そもそも親にかかった容疑と娘の間には何の関係もないが、ローラさんはブログで騒動について謝罪したうえ、「父には日本に来てしっかり本当のことを話してもらいたいと思っています」と語っている。ジュリップ容疑者は、日本で頑張る娘のためにも、司法の場に赴くべきだろう。