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検察事務官による「暴力団幹部」への情報漏えい 「防ぐ仕組み」はどうなっている?
暴力団とつながりのある人物との交際を制限したり、情報漏えいを防止する仕組みはある?

検察事務官による「暴力団幹部」への情報漏えい 「防ぐ仕組み」はどうなっている?

検察事務官が捜査情報を暴力団幹部に漏らして逮捕された――。そんなニュースが世間を騒がせている。

報道によると、逮捕されたのは静岡地検の女性検察事務官。自分の交際相手である同居人の男や、同居人を通じて知り合った暴力団幹部から要求され、職務上知った捜査情報をもらした国家公務員法(守秘義務)違反の疑いが持たれている。なお、この同居人と幹部の2人も同法(そそのかし)違反の疑いで逮捕されている。

検察事務官の仕事は、検察官の指揮を受けて犯罪捜査や令状請求などを行うことだ。極秘の捜査情報に触れる機会も多いため、暴力団幹部や、暴力団とつながりのある人物との交際は問題だと思える。交際を制限したり、情報漏えいを防止する仕組みはないのだろうか。田沢剛弁護士に聞いた。

●暴力団関係者と交流すること自体に問題がある

「国家公務員法は、『職員は、その官職の信用を傷つけ、または官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない』(第99条)と定めています。検察事務官も国家公務員である以上、この規定に従わなければなりません。

国家公務員が暴力団関係者と密接に関わるのは『信用失墜行為』にあたります。報道のように、同棲相手を通じて暴力団幹部と知り合ったうえ、幹部と直接メールをやりとりするなど密接な関係を持っていたとすれば、『信用失墜行為』にあたるでしょう」

つまり、今回の直接の逮捕容疑は、捜査情報をもらした「守秘義務違反」だが、たとえ捜査情報をもらしていなくても、暴力団関係者とメールでやりとりするような関係になること自体に、問題があるということだろう。

――違反するとどうなる?

「この信用失墜行為それ自体には刑罰は科せられませんが、懲戒処分の対象(国家公務員法82条1項)となっています。一定の抑止力はあるといえます」

――公務員は、自由に他人と付き合うことはできない?

「もちろん、誰と付き合い、誰と恋愛をするかは『個人の自由』で、その権利は憲法上も尊重されています。しかし、その自由が無制限に許されるわけではありません。他の人権と同じく『公共の福祉』による制約を受けるのです」

――情報漏えいを食い止める仕組みは?

「そのための仕組み作りは簡単ではありません。たとえば、職場で使用するパソコンやメモリーを自宅に持ち帰ってはならないなど、各機関ごとに具体的な内規が存在するでしょう。

しかし『情報』そのものには形がありません。いったんそれが人間の脳に記憶されてしまえば、簡単に職場の外に持ち出すことができます。

このような情報漏えいに対しては、最終的には、今回のように刑罰をもって臨むほかありません。情報に接する個々の公務員の『倫理意識』に頼らざるをえないということになります」

公務員が情報を外部に漏らすかどうかは、究極的にはその人の「倫理」にかかっているということだ。現在の刑罰がどれだけの抑止力をもっているかは分からないが、公務員の倫理に訴えかけるには、法律で刑罰を定めておくことも重要だということだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

田沢 剛
田沢 剛(たざわ たけし)弁護士 新横浜アーバン・クリエイト法律事務所
1967年、大阪府四条畷市生まれ。94年に裁判官任官(名古屋地方裁判所)。以降、広島地方・家庭裁判所福山支部、横浜地方裁判所勤務を経て、02年に弁護士登録。相模原で開業後、新横浜へ事務所を移転。得意案件は倒産処理、交通事故(被害者側)などの一般民事。趣味は、テニス、バレーボール。

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