2016年03月24日 10時50分

「自炊代行は著作権侵害」最高裁で確定「同様のビジネスモデルの存続が困難に」

「自炊代行は著作権侵害」最高裁で確定「同様のビジネスモデルの存続が困難に」
写真はイメージです

書籍をスキャナーで読み取りデータにする「自炊」。その代行業は著作権法に違反するとして、作家の東野圭吾さんら7人が東京都内の代行業者に事業の禁止などを求めた裁判で、最高裁第2小法廷(小貫芳信裁判長)は3月16日、代行業者の上告を受理しない決定を出した。

判決などによると、自炊代行業者は、客から送られてきた本を裁断して、スキャナーで読み取り、電子データに変換して納品するサービスを有料で提供していた。著作権者の許可は得ていなかった。作家の東野圭吾さんや浅田次郎さんが、著作権が侵害される恐れがあるとして、自炊代行の禁止を求めていた。東京地裁と知財高裁は、いずれも作家らの主張を認め、損害賠償と自炊代行の禁止を業者に命令していた。

今回の最高裁の決定について、著作権に詳しい弁護士はどう見ているのか。雪丸真吾弁護士に聞いた。

●裁判所は「私的複製にはあたらない」と判断した

「最高裁は、そもそも上告を受理しないという言わば『門前払い』の決定を出しただけですので、最高裁が何か新しい判断を下したということではありません。

しかし、それは同時に、最高裁で知財高裁判決がひっくり返る可能性がなくなったということですので、やはりそれなりにインパクトはあると思います」

雪丸弁護士はこのように述べる。どんなインパクトがあるのか。

「確定した知財高裁の判決を振り返ってみましょう。著作権法では、私的に利用するために著作物を複製することは禁止されていません(著作権法30条1項・私的複製)。

自炊代行業者側は、『自炊(複製)の主体は、業者ではなく自炊を依頼した個々人だから、私的複製に該当し、著作権侵害にならない』と主張してきました。

ですが、知財高裁は、複製の主体は業者と判断し、『私的複製』には当たらないと判断しました。おおまかに言えば、知財高裁の考え方は、次のようなものです。

(1)裁断した書籍をスキャナーで読み込み、電子ファイル化する行為は、『複製』に当たる。

(2)この行為は、本件サービスを運営する控訴人(自炊代行業者)のみが専ら業務として行っており、利用者は全く関与していない。

(3)控訴人(自炊代行業者)は、独立した事業者として、営利を目的として本件サービスの内容を決定し、スキャン複製に必要な機器や事務所を準備・確保している。その上で、インターネットで宣伝広告を行うことにより、不特定多数の利用者(顧客)を誘引している。

(4)その管理・支配の下で、利用者から送付された書籍を裁断し、スキャナで読み込んで電子ファイルを作成することにより書籍を複製し、電子ファイルの検品を行って利用者に納品し、利用者から対価を得るサービスを行っている。

こうした点を認定したうえで、『控訴人(自炊代行業者)は、利用者と対等な契約主体であり、営利を目的とする独立した事業主体として、本件サービスにおける複製行為を行っているのであるから、本件サービスにおける複製行為の主体であると認めるのが相当である』と述べました。

つまり、複製しているのは顧客ではなく業者だから、私的複製にはあたらない、と判断したのです」

●今後は「私的複製」の主張で争うことはできない

知財高裁の判決が確定したことには、どんな意義があるのか。

「今回の決定でこの判断が確定したので、自炊代行業者はもはや、この私的複製の主張では戦えなくなります。他に有効な主張は今のところ見当たりませんので、このビジネスモデルの存続はなかなか困難ではないかと思います。

著作権侵害に対する損害賠償額の算定に当たっては具体的事情を考慮することが許されますが、今回の最高裁決定後の自炊代行については悪質性が強いとして、賠償額が高額に算定されるかもしれません。

また、刑事事件として立件される危険性も高まったと思われます」

雪丸弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

雪丸 真吾弁護士
著作権法学会員。日本ユニ著作権センター著作権相談員。慶応義塾大学芸術著作権演習I講師。2014年2月、実務でぶつかる著作権の問題に関する書籍『Q&A 引用・転載の実務と著作権法』第3版(中央経済社)を出版した。
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