電車を撮影するために踏切内に三脚を置いたとして、大阪府警は12月20日、列車往来危険罪の疑いで、堺市の会社員男性を現行犯逮捕した。男性はいわゆる「撮り鉄」で、「危険なのは分かっていたが、国鉄時代の新快速の117系が走るので撮影したかった」と話しているという。
報道によると、男性は大阪府高槻市内の踏切に立ち入って、三脚を置いて、電車の往来に危険を生じさせた疑いが持たれている。男性が踏切内に立ち入ったため、電車が徐行せざるをえなくなり、数本の電車に3〜15分の遅れが生じてしまったそうだ。
行き過ぎた「撮り鉄」が暴走したというのが今回の事件のようだが、逮捕容疑となった「列車往来危険罪」というのはどんな犯罪なのだろうか。田沢剛弁護士に聞いた。
●2年以上の有期懲役
「列車往来危険とは、『列車の脱線、転覆、衝突等が生じるおそれのある状態』を指します。
往来危険罪(刑法125条1項)は、『鉄道もしくはその標識を損壊し、またはその他の方法により、汽車または電車の往来の危険を生じさせた者は、2年以上の有期懲役に処する』という内容です。
踏切に三脚を置くことは、『その他の方法』に含まれるものとして、この犯罪に該当する可能性があります」
法定刑が『2年以上の有期懲役』ということだが、これはどれぐらい重い罪なのだろうか。
「たとえば、往来妨害罪(同124条1項)は、『陸路、水路または橋を損壊し、または閉塞して往来の妨害を生じさせた者は、2年以下の懲役または20万円以下の罰金に処する』と規定しています。
これと比べますと、往来危険罪の法定刑は、極めて重いことが分かります」
なぜそんなに重いのだろうか。
「それは、列車の往来危険が生じた場合、非常に多くの人の生命・身体の安全が犠牲になる可能性が高く、このような危険な行為を故意に行った場合は、厳罰に処す必要があるからでしょう。
また、重い法定刑を定めておくことで、このような犯罪を行わせないように予防しているということもできます」
●結果によっては「死刑」も
もし重大な結果が発生してしまった場合は、どうなるのか。
「往来危険罪を犯した結果、列車を転覆させたり破壊した場合には、往来危険汽車等転覆・破壊罪(刑法127条)として、『無期または3年以上の懲役』に処せられます。
さらに、その上で人を死亡させた場合には、『死刑または無期懲役』に処せられます。往来危険罪は、極めて重い犯罪類型ということができます。
今回は事故が起きたわけではないようですが、撮影するときはちゃんと法律を守りましょう」
田沢弁護士はこのように話していた。