いわゆるJKビジネスを全面禁止する条例が施行された愛知県で8月12日、撮影スタジオ経営の51歳の男性が、この条例に違反したとして逮捕された。
読売新聞などによると、この男性は、自ら経営するスタジオが開いた撮影会で、水着姿などでモデルをするよう、18歳未満の女子高生を勧誘した疑いがもたれている(有害役務営業の勧誘)。調べに対し、男性は女子高生が18歳未満だと知らなかったと話しているという。
一方で、同じ女子高生の水着写真といっても、高校生アイドルの水着グラビアなどは、しばしば見かける。条例ができた愛知県では、女子高生アイドルの水着グラビア撮影もできなくなったのだろうか。
愛知県の条例はどんなルールになっているのか、わいせつ問題にくわしい奥村徹弁護士に聞いた。
●JKビジネスを「有害役務営業」と規定
「愛知県青少年保護育成条例は、女子高校生を『JK』と称して商品化し、その性を売り物とする、いわゆる『JKビジネス』と呼ばれる営業形態を規制するため、平成27年(2015年)に改正されました。
条例では、一定のJKビジネスについて、『有害役務営業』と定めたうえで、次のような行為を禁止しています。
(a)客に接する業務に従事するように18歳未満の青少年を勧誘すること
(b)青少年を客に接する業務に従事させること
(c)青少年を客として立ち入らせること
(d)青少年に対し営業に関する文書等を頒布すること」
●禁止されているJKビジネスの具体例は?
今回の条例で規制されているJKビジネスの営業形態は、具体的には次のようなものです。
(1)リフレ 個室において、高校の制服や下着姿の女子従業員にマッサージや添い寝のサービスを提供すること
(2)散歩 「散歩」と称して、異性と屋外デート、観光案内、自宅の掃除等のサービスを提供すること
(3)喫茶 喫茶店内において、客の指名を受けて談笑やゲーム等をするサービスを提供すること
(4)見学クラブ 大部屋等に制服姿の女子従業員を待機させ、マジックミラー越しに客にのぞき見等をさせるサービスを提供すること
(5)ガールズ居酒屋 居酒屋と称して水着や下着姿でウェイトレスや踊りなどのパフォーマンスをするサービスを提供すること
(6)ガールズバー カウンター席を設置し、女子従業員のバーテンダーがカウンター越しに接客し、酒類等を提供すること
(7)撮影 個室または屋外において、客に女子従業員の制服姿やコスプレ、水着姿等を撮影させるサービスを提供すること
(8)コミュニケーションルーム 店舗を設け、女子従業員が客の要望に応じ、会話・占い・カウンセリング・ゲーム・マッサージ等の複合的なサービスを提供すること
●水着姿の撮影は?
今回の事例は(7)の撮影にあたるのだろうか?
「そうですね。
条例の条文では、有害役務営業を、『店舗型有害役務営業』(条例4条6号)と『無店舗型有害役務営業』(4条7号)というカテゴリーに分類しています。
報道の事例は、店舗型有害役務営業の『撮影』(4条6号ハ)について、モデルとして青少年を勧誘した罪と思われます。罰則は30万円以下の罰金です」
●水着グラビア撮影は?
すると、条例ができた愛知県では、プロカメラマンが高校生アイドルの水着グラビアを撮影することもできなくなったのだろうか?
「4条6号ハの条文は、次のように書かれています。
『店舗を設けて、客の性的好奇心をそそる、水着、制服等を着用した人の姿態又は着衣内の下着を客が見ることができるような人の姿態を客に見せる役務を提供する営業』
この条文には、『客の性的好奇心をそそる』といった要件が付加されております。プロカメラマンの撮影をも規制する趣旨ではありません」
確かに、プロカメラマンの撮影現場に「客」はいないだろう。
なお、容疑者は「年齢を知らなかった」と言っているようだが・・・。
「『当該青少年の年齢を知らないことを理由として処罰を免れることができない。ただし、当該青少年の年齢を知らないことにつき過失がないときは、この限りでない』とされています。したがって、年齢確認を尽くしていないときは、青少年であることを知らなくても処罰されるおそれがあります」
奥村弁護士は、このようなJKビジネス規制について、「現時点では愛知県だけですが、他府県にも拡大すると思われます」と予想していた。