2015年01月31日 13時03分

戦国BASARAで「千利休」が「二重人格の茶人サイキッカー」に――名誉毀損では?

戦国BASARAで「千利休」が「二重人格の茶人サイキッカー」に――名誉毀損では?
戦国BASARAのウェブサイト

歴女にも人気のアクションゲーム「戦国BASARA」に登場するキャラクターが論議を呼んでいる。話題になっているのは、この夏に発売予定のシリーズ最新作「戦国BASARA4 皇(すめらぎ)」に、新キャラクターとして抜擢された「千利休」。ゲームの公式サイトでは「二重人格の茶人サイキッカー」として紹介されているが、「これは酷い」「歴史を冒涜している」と非難の声が上がっている。

公式サイトによると、この千利休は、豊臣秀吉の暗殺未遂の疑いで、豊臣軍に負われているという設定だ。さらに、戦いを好まない「ワビ助」と好戦的な「サビ助」という2つの人格がせめぎあうというハチャメチャな性格なのだという。ネットでは「子孫の人たちはこれを見たらどう思うかな」と批判的なコメントが少なくない。

千利休といえば、戦国時代に茶道を大成した偉人で、いまに続く千家流茶道の開祖である。いくらゲームとはいえ、実在した「歴史上の人物」の性格をこのように描くのは、名誉毀損にあたらないのだろうか。加藤泰弁護士に聞いた。

●死者の「社会的評価」が害される?

「死者に対する名誉毀損罪は、刑法で定められています。虚偽の事実を挙げて、死者の名誉を侵害した場合、犯罪が成立する可能性があります」

加藤弁護士はこう切り出した。死者はすでにこの世にいないが、なぜ、犯罪になるのだろうか。

「遺族の名誉を守るためといった見解や、死者に対する遺族の感情を守るためといった見解もありますが、死者個人の名誉を守るためという見解が、多数説です」

では、歴史上の人物の名誉毀損も、刑罰の対象となるのだろうか。

「名誉毀損罪は、被害者などの告訴がなければ裁判になることのない『親告罪』です。死者の名誉毀損については、親族や子孫に告訴権があるので、その判断しだいとなります。

ただ、そもそも死者に対する名誉毀損罪が成立するためには、名誉を毀損するおそれ、すなわち、死者の社会的評価が害されるおそれがなければなりません。

今回の千利休のように、ゲームのキャラクター設定によって、歴史上の人物の社会的評価が下がるおそれは、ほとんど考えられないのではないでしょうか」

●歴史的人物については「表現の自由」が重視される

どうやら創作であることが明らかで、社会的評価に与える影響が小さければ、名誉毀損罪にあたることはなさそうだ。

では、ファンタジー性の高いゲームではなく、もっと現実味のあるルポやノンフィクション小説などに描かれた場合は、どうだろうか。

「民事の裁判ですが、モデルの死後44年後に発表された小説が問題となった有名な裁判があります。

裁判所は、死者に対する遺族の感情は保護に値するとしつつ、時の経過とともに死者に関する事実は歴史的事実へと移行して、歴史的探求の自由、表現の自由が優位に立つ、と言及しています。

死後まもない故人はともかくとして、教科書に登場するような『歴史的人物』については、表現の自由が重視されるため、名誉毀損が問題となることはないと思いますね」

歴史上の人物は、時に英雄、時に裏切り者として描かれる。実は女性だったという設定の作品もある。私たちは、歴史上の人物に関するバラエティ豊かな小説やドラマを楽しむことができる。その背景には「表現の自由」が保障されているということがあるようだ。

(弁護士ドットコムニュース)

取材協力弁護士

加藤 泰弁護士
早稲田大学法学部卒業、広島弁護士会所属
広島弁護士会広報室室長代理、広島商工会議所青年部会員
Twitter:https://twitter.com/39katoyasushi

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