「泊めてと言われたから、泊めたんです」。そんな言い訳は通用しないのか――。家出中の中学1年の女子生徒を自宅に連れ込んだとして、警視庁は8月末、東京都内の男性会社員(24)を未成年者誘拐の疑いで逮捕した。
報道によると、2人は出会い系サイトを通じて接点を持ったという。男性会社員は、女子生徒の「誰か泊めて」の書き込みに応じて、女子生徒と待ち合わせ、自宅に連れ込んだ疑いがもたれている。「泊まっていかないか。着替えを買ってやろう」などと誘ったという。
「泊めて」と書き込んだ女子生徒の頼みに応じることが、なぜ「誘拐」容疑になるのだろうか。仮に、下心なく善意から泊めた場合でも、問答無用で「誘拐」になってしまうのだろうか。星野学弁護士に聞いた。
●言葉巧みに誘い出して連れ込んだら「誘拐」
「結論から言うと、誘拐罪は、少女が自分から『泊めて』と言ったとしても、成立する可能性があります。『泊めて』という発言があったからといって、違法性がなくなったりはしません」
星野弁護士はこう述べる。なぜ、そういった結論になるのだろう。
「『誘拐』とは、相手をだます『欺罔』や、誘い出す『誘惑』などの手段によって、被害者を自分の支配領域――たとえば犯人宅やホテル――に置くことです。
たとえば、ウソをついて少女をだまし、自分の家に来させた場合は『欺罔』による誘拐となります。言葉巧みに少女に気に入られるようなことを言って、自分の家に来させた場合には『誘惑』による誘拐となります」
つまり、「泊めてほしい」と考えた少女を、言葉巧みに誘い出したら、「誘拐」とされる可能性は十分にあるわけだ。
●本当に少女のことを心配しているなら・・・
それでは、泊まりたいと言った少女を、「善意」で泊めてあげた場合はどうだろうか?
「少女本人が泊まりたいといったとしても、その親はどうでしょうか。親権者は少女を保護する『監護権』を持っています。その権利が侵害されているという事実は、否定できません。
また、社会経験や判断能力の乏しい少女を、大人が自宅に呼び入れる行為は、『社会的に見て正しい行為とは言えない』と思います」
なぜだろうか。
「本当に少女のことを心配したのであれば、自宅に呼ばなくても、警察の協力を得るなど他の適切な手段が考えられるからです。
そうすると、『未成年者誘拐罪』による逮捕という警察の対応も、不当とはいえないと思います。『少女にも責任がある』と非難する前に、少女を泊めた男性の、大人としての無責任な行動が非難されるべきでしょう」
星野弁護士はこのように指摘していた。
たしかに、何かやむを得ない事情で少女を保護したのであれば、ふつうはすぐに警察などに連絡するだろう。「子どもに頼まれたから」というのは、大人の言い訳にはならないということだ。