生成AIで加工した男性の下半身や女性の裸が露骨に描写された画像・動画をSNS上に公開したとして、わいせつ電磁的記録媒体陳列罪に問われた20代男性に対して、京都地裁は2月13日、懲役1年6カ月(求刑同じ)、執行猶予3年の判決を言い渡した。
驚くべきことに顔が露出している女性の画像は、当時の交際相手のものだった。裁判では、手軽に扱える生成AIゆえに問題意識が希薄になっていた実態も浮かび上がった。(裁判ライター・普通)
●画像生成を頼まれる→依頼者は「晒しOK」
スーツ姿の被告人は、着席すると少しおどおどした様子で周囲を気にする素振りをしていた。
検察官の冒頭陳述などによると、被告人は過去にもインターネット上に性的画像を投稿し、罰金刑を受けていた前科がある。
今回投稿されたSNSは招待制で、誰にでも閲覧できるものではなかった。しかし、女性の画像を投稿した場には約200人、男性の画像を投稿した場には約2000人が参加しており、二次拡散のリスクも十分にあった。
投稿された女性の画像は、顔だけでなく裸体も含まれていた。前述の通り、当時の交際相手である。一方、男性の画像は、他者から報酬を受け取ったうえで、生成AIで性的な画像に加工して投稿した。
依頼者の中には、未成年も含まれていたという。依頼者からは「晒しOKです」との言葉をもらっていたというが、それが免責理由にならないことは明らかである。
弁護側は、女性との間で330万円の示談が成立し、支払いが完了している証拠を提出した。
●母親が語った被告人の「承認欲求」
情状証人として、被告人の母親が出廷した。事件当時は別居していたが、保釈後は同居しているという。
母親は、事件の動機について、被告人から「軽はずみに始めたが、承認欲求が満たされた」と聞いたと証言した。この「承認欲求」という言葉は、その後の尋問でも繰り返し用いられた。
弁護人:承認欲求とはどういうことでしょう?
母親:幼少期から私が過度に干渉してしまい、医師からも承認欲求が強いと指摘されました。
弁護人:過度に干渉というのは?
母親:何か成功しても「でもあの子はもっと…」など、私がすぐ他人と比べてしまい、(本人が)自分を肯定する機会を奪ってしまっていました。
母親は、まるで自身に責任があるかのように語った。もちろん、被告人の行為が正当化されるわけではない。しかし、家族として事件を自分ごととして受け止め、更生に協力する姿勢ともとれる。
現在、スマートフォンや預金は母親が管理し、必要な連絡の際のみ、目の前で操作させているという。
●「わいせつ画像の投稿で承認欲求は満たされる?」
被告人本人への尋問では、再犯に至った経緯が問われた。
前科時は、ネット掲示板へわいせつ画像を投稿しており、その動機は「他者からの反応が見たい」というものだった。
今回については「掲示板などオープンでなく、招待制のものならいいのかと思った」などと供述した。
弁護人:自身が承認欲求が強いと思う具体的な例などありますか?
被告人:多くの人に認められたい、インフルエンサーになりたい思いなどでインスタに投稿していて。他にも、見た目やファッションを気にしたり、高級マンションに住んでみたいとか。
弁護人:そういうふうに思う理由などわかりますか?
被告人:小さいころから、何を期待されているかわからず、どうしたら応えられるかなど考えていて。期待に応えられないと価値がないと思ってしまってました。
弁護人:わいせつ画像を投稿することで、その承認欲求が満たされるのですか?
被告人:すぐに「いいね」をもらえ、そう思ってしまいました。
被告人は、性欲を満たす目的は否定した。
●裁判官から厳しく追及される被告人
交際女性については、撮影も投稿も同意を得ていなかった。当初は個人間メッセージでやり取りしていたが、紹介を通じて徐々にコミュニティが拡大していった。
女性を心配する気持ちもあったが、承認欲求のほうが勝ったという。
他人から受け取った報酬は、生成AIの課金サービスに充てており、その他の利益目的は認められなかった。
現在はカウンセリングを受け、自身の欲求を「歪み」と捉えて向き合っているという。承認欲求は他者の尊厳を乱すことでなく、仕事によって満たすと述べ、SNSも今後利用しないと供述した。
裁判官は「なかなか理解できない」「交際相手の画像なら、本来は怒る立場」「恨みを持ってるわけでない、知っている人のものをというのは異常」などと厳しく指摘した。被告人はうなずくほかなかった。
●生成AI時代の責任
判決は懲役1年6カ月、執行猶予3年。
同種前科(罰金刑)がありながらの犯行であり、常習性も認められた。公開範囲は限定的としつつも、閲覧できた人数は決して少なくないと評価された。
SNSで一度拡散された画像は、事実上、回収が困難だ。それが自ら撮影したものであっても深刻だが、今回のように信頼していた交際相手や、顔も知らない第三者によって虚偽の画像を拡散される事態は、想定すら難しい。
生成AIの進化のスピードの凄まじさは、もはや言及するまでもない。だが、社会の倫理観やネットリテラシーは、それに追いついているとは言えないだろう。
実在する人物の写真に対する性的な内容への変換が問題視されており、X社が対応を表明し、イギリス政府は同意のない性的画像の投稿削除を企業に義務付けるルールを提示している。