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銀座強盗、18歳に懲役4年6月の実刑判決 「特定少年」の実名報道、弁護士はどうみる?
犯行の模様(投稿された画像より)

銀座強盗、18歳に懲役4年6月の実刑判決 「特定少年」の実名報道、弁護士はどうみる?

東京・銀座の高級時計店に男らが押し入った強盗事件で、東京地裁は9月25日、強盗罪などに問われた18歳の少年に対して、懲役4年6月(求刑懲役7年)を言い渡した。

事件は今年5月に発生した。腕時計など74点(およそ3億円相当)を奪い、車で逃走した犯行の模様をおさめた動画はSNSで拡散し、大きな関心を集めた。16〜19歳の少年を含む5人が逮捕され、1人が少年院送致の保護処分に、残り4人は起訴されていた。

この内、18歳、19歳の3人については「特定少年」に当たるとして起訴時に氏名が公表されており、産経新聞など実名で報道する報道機関もあった。今回、18歳に対して下された厳しい判決を弁護士はどうみているのか。刑事事件にくわしい本間久雄弁護士に聞いた。

●18歳以上の少年が「原則逆送決定」になる事件とは

——今回18歳の少年に対して4年6月の実刑判決が下されました。改めて「特定少年」とは何か、今回少年はなぜ実刑判決となったのか、改正少年法についてお教えください。

​​令和3年(2021年)5月21日、少年法等の一部を改正する法律が成立し、令和4年(2022年)4月1日から施行されました。この少年法改正によって、18歳・19歳の者が罪を犯した場合には、その立場に応じた取扱いとするため、「特定少年」として、17歳以下の少年とは異なる特例が定められることになりました。

通常の少年事件は、家庭裁判所で少年審判がなされ、非行や要保護性の程度によって審判不開始・不処分・保護処分(保護観察・少年院送致)などの結論が下されます。

ただ、家庭裁判所が保護処分ではなく刑罰を下すべきと判断した場合は、逆送決定がなされ、当該少年は成人と同様に刑事裁判を受けることになります。今回の少年法改正によって、「18歳以上の少年(特定少年)のとき犯した死刑、無期又は短期(法定刑の下限)1年以上の懲役・禁錮に当たる罪の事件」は原則逆送決定がなされることとなりました。

強盗罪は、5年以上の有期懲役が法定刑です。今回の少年法改正によって、逆送決定がなされて刑事裁判を受けることになりました。

執行猶予は3年以下の懲役・禁錮を宣告する場合にのみ、付せられます。強盗罪の法定刑は、5年以上ですので、原則として執行猶予が付けられません。それゆえ、少年に実刑判決が下されたのはやむを得ないものと言えます。

ただ、宣告刑は懲役4年6月と強盗罪の法定刑(5年)を下回っていますので、犯行時、特定少年であるとは言え少年であることが考慮されて酌量減軽がなされたのかもしれません。

●実名報道のあり方は?

——今回の事件で、実名報道する報道機関もありました。特定少年の報道にあり方について、先生はどのように考えていますか。

少年法61条は、「家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。」と規定し、少年の推知報道を禁止しています。

今回の少年法改正によって特定少年が逆送されて起訴された場合には、その段階から、推知報道の禁止が解除されることとなりました。それゆえ、少年の実名報道に踏み切った報道機関があったのでしょう。

ただ、少年法の理念は、「少年の健全な育成を期」するという点にあります(少年法1条)。起訴された特定少年だからといって直ちに推知報道を行うのではなく、少年法の理念に鑑みれば、報道機関が推知報道を行うか否かは、起訴された罪状・否認の有無・事件が社会に与えた影響・少年の前歴の有無や内容等を総合的に考慮して判断するのが望ましいと言えるでしょう。

プロフィール

本間 久雄
本間 久雄(ほんま ひさお)弁護士 横浜関内法律事務所
平成20年弁護士登録。東京大学法学部卒業・慶應義塾大学法科大学院卒業。宗教法人及び僧侶・寺族関係者に関する事件を多数取り扱う。著書に「弁護士実務に効く 判例にみる宗教法人の法律問題」(第一法規)などがある。

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