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「私たちの前から消えて欲しい」女児への強制わいせつ、近所に住む男に被害者家族が語ったこと
大阪地裁(LOCO / PIXTA)

「私たちの前から消えて欲しい」女児への強制わいせつ、近所に住む男に被害者家族が語ったこと

11歳女児に対する強制わいせつの罪に問われた男性(30代)の裁判で、大阪地裁は2023年6月、懲役2年、罰金16万円(求刑同じ)、執行猶予4年の判決を下した。被害者の近所に住む被告人に対して、被害者家族は転居を求めてきたが、家の買取価格が低いことを理由に拒み、裁判官からも苦言を呈されていた。(裁判ライター:普通)

●「自分の娘が同じ目にあったら?」

起訴状などによれば、被告人は家の近くで遊んでいた当時11歳の女児に「姿勢をちゃんとして」などと言いながら、服の中に両腕を差し込んで身体を触ったという。

建設事業などを営む被告人には離婚歴があり、離婚後には交際した女性もいたとして、小児性愛の傾向があるわけではないと供述した。

離婚した元妻との間に娘がいる被告人。弁護人から「自分の娘が同じ目にあったら?」との質問に「殴りたい気持ちになる」と供述し、今回の事件はあくまで「姿勢を直そうとした」のがきっかけで小児性愛の趣向はないと供述。しかし今後、専門的なカウンセリングを受けるという。

検察官からの質問では、「姿勢を直そう」という目的で触った後に、自分の興味で気の迷いが起きたと供述した。「自分の子でないのにどうして?」「なぜ言葉だけでなく触る必要があったのか?」といった質問に対しては口ごもる場面も度々見受けられた。

●またいつ遭遇するか分からないと怯える被害者

裁判では、被告人の自宅からの転居をめぐり応酬が続いた。事件後、実家で母親と暮らす被告人だが、逮捕前まで住んでいた自宅は今も被害者宅の近所にある。被害者と家族は家の近くでいつ被告人と遭遇するかわからないと恐れているという。

検察官は、情状証人として尋問を受けた被告人の母や知人に転居についての考えを尋ねた。被告人の母は「本人に決めて欲しい」、知人は「どうこう言う権限はないけど、不動産屋の紹介はした」と証言するに留まった。

被害者側の弁護人と交渉を続けている示談交渉について、被告人は次のように語った。

弁護人「示談交渉で難しいと思っているのはどの点ですか」
被告人「半径1km以内に近づかないというものです」
 
弁護人「それはどうしてですか」
被告人「自宅があるので売らないといけなくなるので」
 
弁護人「それでどうしましたか」
被告人「不動産屋に査定をしてもらったら、購入時から半分くらいに下がっていました」
 
弁護人「住み替えできる査定ができたら被害者の条件に応じる意思はありますか」
被告人「はい、あります」

●「示談は何のためにするのか」裁判官からの問い

当面は実家に住む予定であるが、被害者宅近くの自宅に帰る選択肢もあると供述する被告人。被害者と直接接触することがなければ大丈夫だろう、という思いがあるとも答え、被害者が恐がっている感情を検察官から伝えられても「自営なので(引越しができない)」と供述した。

裁判官「示談って何のためにすると思っていますか?」
被告人「悪い思いをさせてしまったので、少しでも償う意味で」
 
裁判官「あなたは、家のことは難しいけど、お金は払おうということなのでしょうが、これって何に対して行おうとしているのですか?」
被告人「被害者に不快な思いをさせてしまったので…」
 
裁判官「被害者にとって一生消えないんだよ。お金で解決できるものですか?被害者のためを思うのならどうするのがいいか考えて欲しいと思います」

被告人は頷いたが、裁判官の言葉は被告人に届いただろうか。

●事件後も続く被害者家族の苦しみと判決

裁判の最後には被害者の母からの意見を検察官が代読した。

まず、今後出会わないよう転居を希望しているにもかかわらず、自宅に固執している被告人に対する不満が述べられた。被害者は、男性が近くにいると怯えるようになり、学校に迎えに行く必要がある。そのため親の仕事にも支障が出ている。家のローンもあり、引っ越しをすることもできないと切実な思いを訴えた。

「私たちの前から消えて欲しいだけなのです、永久に。私たちはどうしたらいいのでしょう」

判決は懲役2年、罰金16万円(求刑同じ)、執行猶予4年であった。

判決の言い渡し後、裁判官は「被害者がどのように思っているのか、忘れないように」と説諭した。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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