女子高生が客に簡易マッサージをほどこす「JKリフレ」の経営者ら3人が5月中旬、「児童福祉法違反(有害支配)」の疑いで、大阪府警に逮捕された。摘発があいついでいるJKリフレ店だが、経営者がこの容疑で逮捕されるのは初めてという。
報道によると、逮捕された3人は昨年12月から今年3月にかけて、当時高校2年生の少女(17歳)を監視下において、紙パンツ一丁の男性客に対して、ミニスカート姿でマッサージをさせた疑いがもたれている。警察の調べでは、この店は少女の「待機室」に監視カメラを設置していた。また、遅刻・欠勤をした少女に罰金を科していたという。
ところで、これまで逮捕されたJKリフレ店の経営者は、「労働基準法違反(危険有害業務への就業)」の容疑とされていた。今回は、罰則がそれよりも重い児童福祉法違反とされたが、いったい何が違ったのだろうか。こうした事件にくわしい奥村徹弁護士に聞いた。
●児童福祉法違反(有害支配の罪)がファーストチョイス
「報道を見る限り、『女子高生見学クラブ』『JKリフレ』『JKプロレス』のような業態は従来、年少者労働基準規則8条45号の『特殊の遊興的接客業における業務』に該当するとして、労働基準法62条2項違反で検挙されていたように見受けられます(罰則は6月以下の懲役または30万円以下の罰金)。
ただ、警察実務では、このように児童にふさわしくない業態については、児童福祉法違反(34条1項9号 有害支配の罪)がファーストチョイスとして検討されます」
その「有害支配の罪」とは、どんな内容の犯罪なのだろうか?
「条文には、『児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもつて、これを自己の支配下に置く行為』と書かれています。
法定刑は『3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処し、またはこれを併科する』で、さきほどの労働基準法違反と比べると、懲役刑の上限が6倍にもなる重い罪です」
具体的に、どんなケースなら、有害支配になるのだろうか?
「児童福祉法34条9号で禁止されている『児童の心身に有害な影響を与える行為』については、法律の注釈書の中で、次のように説明されています。
『児福法第34条第1項第1号から第6号までに規定されている禁止行為は児童の心身に有害な影響を与える典型的行為であるが、本号では、右典型的行為や、これに匹敵する行為をさせる目的で児童を支配下に置く行為を捕捉しようとするものである』」
児童福祉法で「典型的行為」としてあげられているのは、「満十五歳に満たない児童に酒席に侍する行為を業務としてさせる行為」(5号)や「児童に淫行をさせる行為」(6号)などだが、これらに匹敵する行為が「児童の心身に有害な影響を与える行為」となるというわけだ。
●「ミニスカート姿でマッサージ」させるのは「有害支配」か?
では、典型的行為に匹敵するかどうかは、どのように判断するのか。
「その点について、法律の注釈書は、次のように記しています。
『児童の心身に有害な影響を与える行為は、各時代に即応した社会通念に照らし、客観的に見て一般に児童に有害な影響を与えることが明らかな行為を言うとされているが、その限界は必ずしも明らかでなく、その具体的内容は裁判例の積み重ねによってこれを確定していくより方法はない』(注釈特別刑法第8巻p797)」
つまり、具体的にどのような行為が「有害支配」にあたるかは、裁判例の積み重ねによって固まっていくということだ。
「過去のケースをみると、児童をマッサージ師見習として雇い入れ、深夜までみだらな行為をするおそれのある宿泊客にマッサージする等の行為をさせていたという場合に、この行為にあたるとした裁判例(静岡家裁沼津支部S46.1.7)があります。
そこから考えると、『紙パンツ一丁の男性客に対して、ミニスカート姿でマッサージをさせた』場合も、この行為に該当すると思います」
●遅刻・欠勤に罰金を科したら「自己の支配下に置く」ことになる
もうひとつの「自己の支配下に置く行為」というのは?
「『自己の支配下に置く行為』は、『児童の意思を左右できる状態の下に児童を置くこと』と定義されています。
判例では、児童に『心理的影響を及ぼし、その意思を左右し得る状態に置き、被告人らの影響下から離脱することを困難にさせた』(最決S56.4.8)場合も含むとされています。具体的には、遅刻・欠勤に罰金を科したり、住み込みで従事させている場合が、それにあたります」
今回のケースでは、どうなるのか?
「今回は『少女の待機室に監視カメラを設置し、遅刻・欠勤をした少女に罰金を科していた』という事情があるので、それが『自己の支配下に置く』にあたると当局が判断し、重い児童福祉法を適用したのだと思います」
奥村弁護士はこのように述べる。
報道によると、『監視カメラは売上金の着服を防ぐためだった』と経営者は弁解しているようだが・・・。
奥村弁護士は「仮にそういう目的があったとしても、児童らに『心理的影響を及ぼし、その意思を左右し得る状態に置き、被告人らの影響下から離脱することを困難にさせた』という事実上の効果があれば、『自己の支配下に置いた』根拠になりうると思います」と話していた。