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エルメスの文字切り抜き加工、「リメイク品」販売で逮捕された女たちが陥ったワナ
写真はイメージ(mits / PIXTA)

エルメスの文字切り抜き加工、「リメイク品」販売で逮捕された女たちが陥ったワナ

高級ブランド「エルメス」の文字やロゴを使用したリメイク品を販売したとして、40代の女性2人がこのほど、商標法違反の疑いで兵庫県警に逮捕された。

兵庫県警によると、2人は2021年5月から12月にかけて、共謀のうえ、何の権限もないのに「Hermès」の文字を使用したヘアゴムなど計7点を4人に販売して、仏エルメス・アンテルナショナル社の商標を侵害した疑いが持たれている。

報道によると、正規品のスカーフやネクタイから文字やマークを切り抜き、ヘアゴムやボタンなどに加工していたという。1人が製造・発送を担当して、もう1人がインスタグラムで商品の宣伝や販売をおこなっていたようだ。

警察の取り調べに対して、2人とも「違法とは知らなかった」と容疑を否認しているということだが、リメイク品づくりにはどのような法的問題があるのだろうか。知的財産権に詳しい岩永利彦弁護士に聞いた。

●リメイク品の作成が「違法」となるのは?

ーーそもそも、リメイク品をつくること自体に法的な問題はないのでしょうか。

今回のように法的な問題がある場合と、ない場合があります。

今回のケースは、エルメス社が製造販売する正規品ではないヘアゴムにエルメスの文字やマークを取り付けたというものです。つまり、非正規品に正規品同様の商標を付けたというわけですから、海賊品・コピー品と同じことになります。

一方で、問題のない場合とは、正規品同様の文字・マークを付けない場合です。

ーー今回のように販売するのではなく、自作したエルメスのリメイク品を無償で他人にあげた場合も違法になるのでしょうか。

結論からいえば、違法となるでしょう。仮に無償であげた場合を「合法」とすると、妨害目的や市場破壊目的で非正規品をタダでばら撒くようなこともできてしまうからです。

ただし、1回限りの場合は違法とされない可能性もあるにはあります。ポイントは、現に何度も繰り返しているかどうか、または繰り返しそうであるかです(反復継続性)。 

ーー自分で使うためだけに、リメイク品をつくる場合はいかがでしょうか。

完全に自分で使うためだけならば、OKでしょう。しかし、自宅に何個も自作のリメイク品が積み重なった場合、売ろうという誘惑に勝つのは難しいのではないでしょうか。それに自分で使えないくらいの個数の在庫がある場合は、「自分で使うためだけ」という言い訳は通用しないような気もします。

ーーリメイク品を購入することも違法になりますか。

海賊品・コピー品の購入が違法ではないように、リメイク品の購入自体は違法ではありません。この点は、所持でも罰せられる児童ポルノとは異なります。ただし、本物でないことを知りながら、転売目的で購入した場合は、違法となります(商標法37条2号等および同法78条の2)。

●「これっておかしいのでは?」素朴な感覚を大切に

ーー報道によると、今回逮捕された2人には「違法である」という認識がなかったとされています。リメイク品をめぐって、どのような点に注意すべきでしょうか。

著作権に関する事件でもそうですが、逮捕などされた後に、「違法だとは思わなかった」「悪いことだとは知らなかった」などと言い訳することは多いと思います。

しかし、「これって、他人のやったことにそのままタダ乗りしているだけなのではないか」と思われるような行為は、やっぱり法律違反であることが少なくありません。

法律は、主権者である国民の代表、国会議員によって国会で作られますので、「これっておかしいのでは?」という素朴な感覚と一致していることが大半です。

リメイク品のような他人のふんどしで相撲を取るタイプのビジネスモデルには、落とし穴がありそうだということに注意しておいたほうがいいでしょう。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

岩永 利彦
岩永 利彦(いわなが としひこ)弁護士 岩永総合法律事務所
ネット等のIT系・ソフトウエアやモノ作り系の技術法務、知的財産権の問題に詳しい。メーカーでのエンジニア、法務・知財部での弁理士を経て、弁護士登録した理系弁護士。著書「知財実務のセオリー 改訂版」及び「エンジニア・知財担当者のための 特許の取り方・守り方・活かし方 (Business Law Handbook)」好評発売中。

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