熊本市がこのほど発表した懲戒処分の内容がネットで物議をかもしている。
コンビニでカフェラテ1杯を盗んだとして逮捕された非常勤職員が、懲戒免職になったことが「重すぎる」というのだ。
それというのも、業務上過失致死や傷害で略式命令を受けた職員は、停職や減給で済んでいるためだ。
なぜこのような処分になったのか、熊本市に取材した。
●コーヒー代金100円を支払って、カフェラテ(200円)を注ぐ
熊本市が2月18日付けで発表・処分したのは、熊本市中央区役所の非常勤職員(60代)だ。
1月21日、市内のコンビニで、ホットコーヒーのレギュラー(100円)を購入しながらも、カフェラテのラージ(200円)を容器に注いだ。店からの相談を受けた警察が、窃盗罪で現行犯逮捕した。
ほか3人の職員の処分も発表された。ネットで比較対象にあげられているのは以下の2人。
<停職3カ月>マンション建設予定地における遺跡発掘調査で、臨時職員3人が生き埋めになり、1人が死亡した事故について、責任者だった職員(40代・業務上過失致死で罰金50万円の略式命令)
<減給10分の1(1カ月)>自分の子どもを持ち上げて床に落とすなどの暴行をくわえた職員(40代・傷害で罰金10万円の略式命令)
ネットでは次のように処分内容に疑問を持つコメントが目立つ。
「100円を誤魔化した人は懲戒免職で、生き埋めや怪我をさせた方は懲戒処分では、差があり過ぎませんか?」
「100円の窃盗という微罪の非常勤職員は懲戒免職だけど、人を死なせたり他人に暴行したりした正規職員は免職にはならないんだな」
●市の人事課「総合的に判断した」
「熊本市の懲戒処分の指針」における基本事項
熊本市の人事課によると、職員への懲戒処分は、「熊本市の懲戒処分の指針」にもとづき判断している。
公務外の「窃盗・強盗」については、「他人の財物を窃取した職員は、免職又は停職とする。」との規定がある。
「暴行(≒ケガがない)については、「停職」「減給」とあり、「免職」とまでは定めていない。窃盗については「免職」「停職」とあり、重い規定が定められている(熊本市懲戒規定より)。
人事課では、個別の処分について、詳しい説明は差し控えるとしたが、「実は1回ではなく、過去に何回も繰り返していた事実は間違いない」としている。逮捕時には、「20回くらいやった」との供述が報道されていた。
・今回の逮捕によって、過去の事件も明らかになったのか。
・それとも、今回の事件前から、同じ行為で逮捕されたり、懲戒処分を受けたりしていたのか。
この点をさらに質問したが、過去の処分などについては答えられないとのことだった。
●非正規だからクビにしやすいということはない
なお、「正規・非正規の立場に関係なく、懲戒処分の指針は同じく適用される。コーヒーの件で免職された職員が仮に正規職員だったとしても、懲戒免職になっていた」という。
「指針にもとづき、いろいろと判断して処分した。免職はもっとも重たい処分なので、厳しいと感じられるかたもいると思うが、公務員である以上、全体の奉仕者であるため、市民の信頼に基づいて業務しなければいけない」
●専門家は「違法」の可能性を指摘
行政法の研究者でもある平裕介弁護士は、
「熊本市の懲戒処分の指針に照らすと、報道を前提にすれば、回数は多いものの、被害額は合計数千円とそこまで多くない。前科前歴がなく、日頃の勤務態度も良いなどの場合には、比例原則違反(裁量権の逸脱濫用)となり違法とされる余地はあるように思います」
とコメントした。人事課が「厳しいと感じられるかたもいると思う」と話すように、ギリギリの対応と言えるかもしれない。