無免許運転の容疑で9月上旬、福岡県警に逮捕された81歳の男性が、40年間以上も無免許で運転していた疑いがもたれている。
報道によると、男性は、8月22日から26日にかけて3回にわたり、太宰府市内などで無免許運転をした容疑で逮捕された。県警の調べで、記録が残っている1970年ごろから免許証の取得や更新がなく、40年間以上も無免許だった疑いが浮上している。
仮に、40年間以上にわたり無免許で運転していたことが本当なら、罪の重さも40年分になるのだろうか。刑事事件に詳しい前島申長弁護士に聞いた。
●量刑を判断する際の要素になる
「結論から言えば、40年間にわたって、無免許運転を繰り返したからといって、罪の重さがそのまま40年分になるわけではありません。ただ、長年、無免許運転を繰り返していたとして、量刑を重く判断する要素として働くことになります」
前島弁護士はこのように述べる。具体的に、量刑はどうやって判断するのだろう。
「裁判所は、犯罪の内容、動機、手段、方法、結果、社会的影響とともに、被告人の年齢、性格、反省の態度などを総合的に考慮して、量刑を判断しています。
また、裁判所には、過去の同種事案の裁判例に関するデーターベース(一部は電子化されています)があります。担当裁判官は、過去の同種事案の量刑を参考にして、本件についても量刑を判断することになります」
●実刑判決はまれだが・・・
無免許運転の場合は、どんなことが判断材料になるだろう。
「無免許運転を行った場合、免許の取り消しなどの行政処分のほかに、道路交通法により罰則を課せられることになります。道路交通法では、無免許運転をした者に対して、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処すると規定しています。
無免許運転罪の量刑に際しては、(1)同種前科や交通違反歴があるか、(2)無免許運転をする必要性(たとえば急病人を搬送する必要性)があったか、(3)人身事故が発生しているかなどが重要な判断材料となります。
無免許運転罪については、そのほとんど(90%以上)が、略式裁判により罰金刑に処せられています。公判請求された場合でも、実刑判決が下されることは極めてまれと思われます。
本件の場合、40年間の長きに渡り、無免許運転を繰り返したという点は、当然量刑を重く判断する要素として働きますので、その他の事情によっては、公判請求される可能性があると考えられます。
また、男性が、同時に人身事故(特に死亡事故や重篤な後遺症が残る事故)を起こしていたような場合には、過失運転致死傷罪に問われることになりますので、実刑判決が下される可能性も出てくると思われます」
前島弁護士はこのように分析していた。